第1章 the very first day
暫くして。
コンコン。
控室の扉が叩かれた。
「清野さくらさん、ダイナマイト。移動をお願いします」
「!」
いよいよだ、、、。
ドクンと心臓が嫌な音を立てた。
「じゃあ、さくらさん、頑張って。ダイナマイト、ちゃんと彼女を案内してあげてね」
「分かってる!クソナードの癖に指図してんじゃねぇ!!」
扉から出る。
隣にはダイナマイトが立っている。
ダイナマイトはただ厳しい顔つきで前を見ていた。
「、、、」
気まずい、、、。
でも何でだろう?
ダイナマイトは近くにいても体が固まったりしない。
さくらは自分の身体が若い男の人の隣にいても震え出したりしないことを不思議に思った。
ま、この人自体が怖いってことには変わりないんだけど、、、
そんな事を考えていると、
「オイ!お前!!」
「、、、ッ!!」
ドン!!という音と共に突然壁に押し付けられた。
「お前、さっきの。あの時のことあんまし覚えてねェって本当か?」
「!!」
その問いにさくらの身体は固まる。
真剣な表情のダイナマイトの鋭い瞳が言っていた。
俺は誤魔化されねェぞ。
鼓動が一際早くなった。
「俺は見た。あん時、テメェ、アイツに何か話しかけられてただろーが?」
「、、、!!」
その瞬間、さくらの脳裏にあの時の光景が鮮明に甦った。
何度も何度も嘘だと言い聞かせて、忘れようとしていた記憶。
あの時。
アイツがその真っ黒な手を伸ばしてきた時、確かにアイツは言ったのだ。
『久しぶり。また、会えたね』
その声はまるで頭の中に直接響いてくるような、一見穏やかな声。
『また僕を助けてくれる?』
声の主の見た目は昔とは全然違う。
それなのにさくらはそのねっとりとした声を聞いて確信した。
アイツだ。
それは15年前、おばあちゃんの死のきっかけになったあの男の声。
信じたくない。
あんなこと二度と経験したくない。
でも、だけど、、、
アイツはまた戻ってきた。
その事実が変わらないことを思い知らされた。