第1章 the very first day
「それでは、また来ますね!お大事に」
さくらは病室から出て、扉を閉めた。
「ホッ」
と一息ついたとき、
ザン!
「えっ?」
突然、目の前に黒いスーツを着た2人組が現れた。
「ッ!!」
ヴィラン、、、!?
「す、すみません!ビックリしたよね!?」
大声を出そうとしたところを、服装と似合わぬ可愛らしい声に止められる。
「わ、私はウラビティ。ヒーロー協会から来ました。で」
「同じく、俺はショートだ。清野さくらさんですね。これから、ヒーロー協会まで来て欲しい」
「え?ヒーロー協会?」
突然のことに戸惑う。
「この間の襲撃事件の件で、証言をしてほしいんです。あなた、何かを見たん、、、ですよね?」
そう言ったウラビティの顔は、真剣だった。
言われてみれば目の前の2人は見たことがある気がする。
ウラビティ。そう名乗った女の人は、素朴で大人しく露出は少ないヒーローだが、ヘルメットを脱いだときに垣間見える可愛らしさと訛り言葉で一部で熱狂的人気のあるヒーローだったはず。
そしてもう1人。ショートと名乗ったその人は、見たことがあるというか、あのエンデバーの息子として、プロになる前から話題だった人だ。
ただこの人は、、、ダメ、、、
昔のトラウマが頭に浮かび、身体が逃げたがった。
さくらは出来るだけショートの方から視線を外して、答えた。
「何か、、、って、それはあのヴィランのことですか?」
ウラビティが頷く。
「、、、でも私が見たのはほんの一瞬で」
真剣な2人の役に立ちたい。
たださくらにはその、何か、について話すことどころか、思い出すことも躊躇われた。
それを人前で、しかも協会の人達の前で証言するなんて。
言葉にしてしまったら最後、それが本当のことになってしまいそうで。
頭の中に浮かびそうになった黒い影に急いで蓋をする。
「協会の皆さんの前でお話しできるようなことではないんじゃないかと」
ウラビティのまっすぐな視線を避けるように言った。
「すみません」
「そっかー」
「仕方ないな」
2人が肩を落とす。
「ダイナマイト1人でいけるか?」
「いや、無理ちゃう?だってあんな調子やもん」
「ダ、ダイナマイト、、、?」
「「え?」」
「あっ」