第4章 遭遇
「私はもう大丈夫。お願いです、助けてあげて」
さくらは精一杯の力を込めて爆豪の腕を掴んだ。
「…ナンバーワンならそうすると思う」
脅し文句に爆豪が目を丸くする。
「チッ、バカが」
短く吐き捨てるようにため息を吐いて爆豪が立ち上がる。
さくらはその様子にホッとした。
「良かった…」
「だがテメェがはここにいろ。いいか、ぜったいに動くな。ぜったいだ!」
「え…でも」
「足手まといだっつってんだよ!テメェのことが気になって、助けられるもんも助けられねぇだろーが!」
爆豪が怒る。
「いいか、俺様にナンバーワンになってほしかったら、テメェは安全な場所にいろ。俺様が仕事に集中できるようにしてろ」
「…、分かりました。安全なところに行っています」
「1人になるな、ぜったいに」
「はい…」
抱きしめられて声が出ない。
自分から言ったのに、彼の温かさが惜しくなるなんて変だ。
「勝己くんも、ぜったいに帰ってきてください。私、お腹空いてきましたから、一緒に帰って、夜ご飯食べましょう」
「あぁ、約束する」
さくらは強く強く爆豪の身体を抱きしめ返した。
そしてスッと離れて笑う。
「いってらっしゃい」
好き。
爆豪はいつものようにあの悪魔の人形そっくりな不敵な笑みを見せてさくらに背中を向けた。
さくらはその眩しさに思わず目を細めた。
初めて会った日、月に照らされたその背中に恋をした。
今日は夕日に照らされたその背中を見てまた思う。
背中越しに軽く手を上げて爆発音とともに瞬く間に飛び立って行ってしまう大きな背中が。
そんなあなたが好きなんだと。
さくらはギュッと爆豪の着ていたジャケットを抱きしめて、片手で小さく手を振った。