第4章 遭遇
爆発音とほぼ同時に爆豪はさくらに覆いかぶさった。
さくらの無事を確認して音のした方へ視線をやると何ブロックか先に煙が見えた。
「あれは…」
爆豪の腕の中でさくらは自分の鼓動が早まるのを感じた。
どこか焦げ臭いその土煙の匂いに身体が震える。
あの日、病院が襲われた日の光景が蘇って、思ったように息ができない。
「無事か?」
「ッ…」
爆豪が心配そうにこちらを覗き込んでいる。安心させたいのに声が出ない。気持ちばかりが焦ってさくらは爆豪の腕を掴んだ。
爆豪はそんなさくらの体を力強く引き寄せると、サッと自分の着ていた皮のジャケットをさくらの頭から被せた。
そしてギュッと抱きしめて言った。
「大丈夫だ」
「ッは…はぁ…う」
「ゆっくり…ゆっくりでいい」
言いながら爆豪の力が強まるのを感じた。
「…ッ」
息はまだうまくできない。
それでもその力強い腕に周りの喧騒が嘘のように消えていく。さくらの耳に聞こえるのは爆豪の呼吸の音だけになった。
勝己くん…私に見せないようにしてくれてる…
どれくらい経ったのかさくらには分からなかった。
温かいその温度に身体が解けて、
少しずつ爆豪の匂いを纏った空気が胸の中を通り始めた。
「…ごめん、なさい。も、大丈夫ですから」
よろよろと立ち上がって爆豪のジャケットから顔を出すと、まだ心配そうに爆豪がさくらを見ていた。
「うそこけ。まだ真っ青じゃねぇか」
「大丈夫です、もう本当に」
さくらはまだ動くことはできなかった。
それでもこれ以上爆豪の世話になりたくなかった。
「勝己くん、行ってください」
「は?テメ、何言って…」
「誰か、ケガしてるかもしれません。私もあとで向かいますから」
「バカ、テメェを置いて誰を助けるんだよ」
「…ッ」
爆豪の言葉に、初めて会った日のことを思い出す。
あの時も「無事か?」と彼はそう言った。
そして私の無事を確認したらすぐに飛んでいってしまったのに。
正直、嬉しい。泣きそうなくらい。
でも…
あの日私が助けられたように今彼が行けば助かる人がいるかもしれない。
それに肩に置かれた熱い手に感じる。
1番行きたいのはきっと彼だ。