第3章 特等席
「…オレだけの場所だよね?」
「ああ?」
歩調が落ち着いた頃に、小さめの声で問い掛けてみる。
「ケンちんの背中は、オレだけのものだよね?」
「は?当たり前だろ。こんな手のかかるヤツ、マイキー以外にいるかよ」
「そうじゃなくてよお」
俺の言ったのは、そういう意味じゃないのに。
でもケンちんはぼそぼそと小さく返した。
「…解ってる。恥ずかしいからあんま言うな」
言いたいことは伝わっていたらしい。照れている様子のケンちんの耳元に向かって囁いた。
「ケンちん大好き」
すると、ケンちんはみるみるうちに耳まで真っ赤になった。
「お前、それ…ズルいだろ…」
ごにょごにょと歯切れの悪いケンちんの首元にぎゅっとひっついて、さらに尋ねる。
「ケンちんは?オレのこと好き?」
「はあ?それ…今言わなきゃダメか?」
「うん」
降参したようにケンちんは呼吸を整えたあと、俺の欲しい言葉を伝えてくれる。
「……好きだぜ、マイキー」
「…ふ、あははっ」
「人に言わせといて、なに笑ってンだよ、このやろッ」
安心したら、また眠たくなってきたなぁ。
大好きな背中で
ゆらゆら揺れる
大切な人と二人だけの
俺の大切なひととき
.