第2章 アップリケ騒動
「テメー逃げんのか?ドラケン」
「あ?穴開いてねえんだからしょうがねえだろ?」
逃がすかとばかりに場地が退路を塞いでくる。
「心配すんな。ドラケンのも繕ってやるよ」
「繕う箇所がねえって言ってんだよ!」
「じゃあ今後の抗争で破れないように補強してやる。マイキーのもな」
三ツ谷の親切な提案を聞き、くるっと踵を返すマイキー。
「じゃあみんな、お疲れ。解散!」
「おい…一人で逃げんなよマイキー!」
やはり逃げた総長に対しドラケンは思った。一番ひよってんのお前じゃねえか、と。
「何がいいかなー、ムーチョはS62か風紀の文字入りでー、スマイリーは毛玉でも付けとくか。場地は…ペヤングでいいかあ」
「おい…オレの適当すぎないか?嬉しいけどよ」
「嬉しいのかよ場地…ってオレ毛玉ァー!?」
材料を取り出して作業モードに入り、あれこれ思案する三ツ谷の話を聞いてあげる場地。その横で、アップリケですらない物を付けられそうになり扱いに嘆くスマイリー。さらに三ツ谷の構想は続く。
「マイキーは卍でいいや。あとドラケンのは…」
「いやだから、いいってオレのは」
「特別に気合い入れて、とびっきり可愛い龍のやつにしてやるよ。双龍でおそろでな」
ニッと笑顔を向けてくる三ツ谷を見ていると、ドラケンは何だか断りにくくなってしまった。
「じゃあせめて…そこは可愛いじゃなくてカッコいいやつにしてくれ」
その後しばらくの間、主要メンバーは皆アップリケ付き隊服を着用し、お茶目なチームとなった東卍であった。
終