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雨のち花笑み【風強・ハイジ】

第5章 一等星



「酒足りてる?さつきちゃんって飲めない人?」

「そういうわけじゃありませんけど、飲み過ぎて失敗したことがあるので。今日は気をつけようかと」

「飲み過ぎたら送ってあげるし。家どこ?」

気遣いや人当たりの良さだけを見たら、清瀬さんに似ているようにも感じた。
しかし時間が経つにつれ、部類が違うとわかる。
清瀬さんには節度があった。
まるで、人を不快にさせないような立ち入り方を知っているみたいに。
でも、藍田さんは……。


いけない。
また清瀬さんのことを考えてしまった。


「さっき頼んだんだ。これなら飲みやすいだろ?」

目の前にロゼワインのカクテルが置かれた。
グラスの中にアメリカンチェリーやブルーベリー、苺が浮かんでいて見た目も華やか。

「サングリア?わぁ、美味しそう!」

「ふっ、今の顔、かーわいい」

そう言って藍田さんは私の頭をポンと撫でた。

いや。頭触る必要がどこに?

お洒落なカクテルで上がりかけたテンションは一瞬で急降下。

「すみません、少し席外します」

「えー?早く戻ってきてね」

「……」


確実に女慣れしている。
モテそうだし、更にはそれを自覚していることが端々から伝わってくる。

何だか疲れてしまい、ノソノソとお手洗いに逃げ込んだ。
鏡の前で髪をいじっていた後輩がこちらに気づき、声を弾ませる。

「あ、さつきさんだ!やっと話せる!隣の人、どんな感じですか!?」

「ああ…藍田さんね」

「カッコいいですよね!ちょっとチャラそうだけど」

「やっぱりそう思った…?」

「気に入られちゃいましたねー。さつきさんにベッタリなんだもん。ちゃっかり名前で呼んでるし」

「ちょっと距離感近くて。避難してきた」

「あー、いますね。そういう人。でも合コン相手ならともかく、仕事の関係者じゃ邪険にできないですよね」

「そうそう。ちょっと時間潰してから戻るね」

「了解でーす」

幹事じゃなければ、気分が優れないことにして帰りたいくらいだ。


清瀬さんといた時は、戸惑うことは多々あっても不快な気持ちになったりはしなかったな。
安易に体に触れたりしない人だったし。

………ダメだってば!!
また清瀬さんのこと考えてる!!

あの人はもう関係ない。
清瀬さんが好きなのは、白河さんなんだから。


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