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雨のち花笑み【風強・ハイジ】

第4章 桜の頃までそこにいて



「清瀬コーチの話を聞いたからってわけじゃないけど。最近のさつき、いい顔になったと思ってたんだ」

「ほんと?可愛い?」

「うん」

「綺麗?」

「まあまあ」

「ちょっと!お世辞くらい言ってよ!」

「冗談だし。綺麗になったよ。っていうか、そういうことは清瀬コーチに言ってもらいな?」

「あー…いや…」

謙遜などではなく、そんなふうに思ってもらえてるとは想像できない。
そもそも清瀬さんの美的感覚は普通じゃなさそう。

「はい、さっさと食べて買い物行くよ!」

清瀬さんがデートに誘ってくれたことも嬉しかったけれど、ルリちゃんが自分のことみたいに喜んでいる姿が、私には同じくらい嬉しかった。




街中を色々と見て回り、春らしいシフォンのブラウスを手に入れた。
記録会にいても場違いな格好にはならないよう、パンツスタイルで出掛けるつもりでいる。
その分上半身は女らしく。露骨な肌見せはしないけど、背部の襟ぐりは若干深めのもの。
ルリちゃんが言うには、胸元ではなく背中側の肌をチラっと見せるのがポイントらしい。
無防備な後ろ姿は、男が付け入る隙を作るんだとか何とか……ホントかな……?

「また報告してよ?」

「うん。付き合ってくれてありがとう」

「女らしい小物選んでね!ハンカチは清瀬コーチが忘れても大丈夫なように一枚多く持ってくんだよ!気の利く女アピール!」

「……うん」

清瀬さんはハンカチを持ち歩かないタイプではないと思う。
しかも、私なんかよりよっぽど気の利く人間だということは既に証明されているから、アピールも何も今更遅い気がする。
ただ、デートが成功するよう思いつく限りのアドバイスをくれる友人に対して、今は心からのありがとうの気持ちしかなかった。







翌日の天気は、運良く晴れ。
というか、天気のいい日を見計らって私を誘ってくれたのかもしれない。
清瀬さんなら、そこまで考えて用意周到に事を運びそうだ。

新品の服を纏い、ルリちゃんに言われたとおり、女性らしい華奢なピアスとネックレスを身に着けた。
あとは、服のネックラインが映えるようにまとめ髪でアレンジして、下地から丁寧にメイクして…。
今までの私からしたらなかなか気合いを入れたつもり。


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