第2章 リスタート
宣言どおり、飲んだ後は近くのカラオケ店に入る。
「風見さんが好きな歌、これだろ?」
「そう!そうです!」
清瀬さんはマイクを握り、私の思い出の歌を歌い始める。
第一声を聞くなり思わず歓喜の声が上がりそうになるが、何とか間奏まで持ち堪えた。
「ちょっと清瀬さん!めちゃくちゃ上手い!!この歌難しいのに!こんなに上手く歌える人、初めて見ました!」
「ははっ、いくらなんでも褒め過ぎだ」
「大袈裟とかじゃなくて!このアーティスト歌えるなら、こっちも歌ってほしいんですけど!」
「ああ、それならこの前も歌ったよ」
「ほんとに!?あぁぁー…私、何て勿体ないことしたんだろう!」
そしてその流れで、ゲームセンター。
「歌は上手いのにゲームは壊滅的なんですねぇ…」
手当り次第、色々なゲームで勝負してみるが、現在私の5連勝中。
今はホラーゲームのターン。
「あ、そこ。上からゾンビ来ますよ。すぐ撃たないと死にます」
「え!?」
言ってるそばからゾンビに襲われた清瀬さん。
無念のご臨終でゲームオーバー。
「6連敗になっちゃいましたね」
「初心者なんだ、仕方がないだろう。もっと傾向と対策を練ってだなぁ…」
「もしかしたら、私の苦手なものが得意だったりするのかも」
「風見さんの苦手なものって?」
「UFOキャッチャーです」
「ああ、それならやったことあるぞ」
私たちは人もまばらなクレーンゲームのコーナーに移動する。
いくつかあるガラス越しに見えるのは、お菓子におもちゃ、流行りのアニメのキャラクターグッズ。
「あ、可愛い!」
その一角に、犬のぬいぐるみが積み重なっているのが見える。
チワワ、ダックスフント、トイプードル。数種類ある中から、私が一番気に入ったわんこを指差した。
「柴犬欲しいなぁ」
「よーし」
硬貨を入れた清瀬さんが、距離を見計らってクレーンを動かしていく。