第2章 リスタート
「おいしぃぃ…」
温かい味がする。
お寿司やステーキとはまた違う。
癒やされるというか、疲れた体に栄養が染み渡るというか。
母親に作ってもらう料理のように、ホッとする味。
「清瀬さんお料理上手なんですね!」
「普通に作れる程度だよ」
「でも、すごく美味しいです」
「そう?良かった。風見さん、料理は?」
「恥ずかしながら、簡単なものしか作れません。炒めるとか焼くとか、そういうものばっかり」
「へえ。好きなおかずは?」
「魚の煮付けとか好きですよ。あとハンバーグ、オクラのお浸し、ポテトサラダ、ゴボウの金平…」
「沢山あるな。俺と付き合ったら、今言ったもの全部作ってあげるのに」
「え?」
テンポよく弾んでいた会話がピタリと途切れる。
隣に座る清瀬さんは箸を止めたまま、ニコニコと私を眺めていた。
「……これ、もしかして餌付けですか?」
「人聞きの悪いことを言わないで欲しいなぁ。風見さんに美味しいものを食べてもらいたいっていう、男子心だよ」
「確かに美味しいですよ」
「それは良かった」
男子心の件は触れないでおこう。
今はオトモダチ。最初にそう言ったのは清瀬さんなんだから。
「そうそう。蔵原くんのことを話しましょうか」
「え?カケル?」
何のことだ?みたいなキョトンとした顔で、こちらを見つめてくる清瀬さん。
その表情で、ピンとくる。
「蔵原くんのことで相談って…もしかして嘘ですか!?」
「嘘…。あっはっはっ、面白いことを言うなぁ風見さんは!」
怖っ…!何が面白いのかがわからないんですよ。こっちは。
「 "お昼ご飯一緒に食べよ〜" って誘いに行ったら、周りから噂の的にされてしまうだろう?飽くまでも仕事の延長という体にしたつもりだったんだが」
「そんな回りくどいことしないで、電話なりLINEなりして誘えば済む話でしょう?周りを気にするくらいなら、何でわざわざうちまで来たんですか!?」
「なるほどぉ!電話かぁ!それは気づかなかったなぁ!」
嘘!絶っ対に嘘!
何という白々しい演技。
さっき話していた時は普通に親しみやすい人だと思ったのに。
何を考えているのか一気にわからなくなる。
「ごめん。嘘だ」
「……え?」
「会いたかったんだよ。風見さんに」