第6章 月夜に色づく ※
自制心も羞恥心も忘却の彼方。
お互いに一度目のセックスよりも欲望のまま、そして快楽を堪能しているみたいだ。
最後には座位で向かい合い、深いキスで隙間を埋めながら腰を振る。
もう、どちらが刺激を与えているのかわからない。
セックスに没頭することがこんなにも快感だなんて、知らなかった。
こんな私がいるなんて、初めて知った。
「んっ、それっ、きもちぃ、ハィ…、さぁん、」
「…っ、ぁ、ここ?」
「あ、ぅん、そこっ、そこっ!ハイジさ…、は…?きもちい…っ?」
「気持ち、いいよ…っ、はぁ、駄目だ、も、イクっ…」
「ひゃっ…、はぁ、……っあああ───!」
私の予感は当たっていた。
ハイジさんのテリトリーの中では彼に溺れるだけ。
今の私は、ハイジさんのいない世界では生きていけないジャンキーだ。
二度目のセックスのあとはもう私の体力がゼロで、シャワーは明日にしようと宥められながら一緒に横になった。
月夜も深くなった頃、今度こそ、二人で眠りにつく。
ふと目が覚めた時、私を抱きしめたままのハイジさんに気づき、また心が満たされたのを覚えている。
その夜見たのは、幸せな夢だった。
───………
微睡みの中で漂ってくるのは、出汁の香り。
そしてカーテンの隙間から零れ射す太陽の光。
体を捩っても、そこにハイジさんの姿はない。
出汁を取っているのは誰かと考えたとき、彼以外にいるはずはなく…。
「…おはようございます」
「あ、起きたか?おはよう。朝飯、和食でよかったよな?」
「はい、ありがとうございます」
夕べ、一度目のセックスの後でそんな話をしたっけ。
「手伝います」
「味噌を溶かしたら出来上がりだ」
「…そうですか。すみません」
ハイジさんにはご飯を食べさせてもらってばかりいる。
いつか、"俺はさつきのお母さんじゃない!" なんて喧嘩になったりしないだろうか…。
甘え過ぎには気をつけよう。