第6章 月夜に色づく ※
もっと気持ちよくなってもらいたくて、私からも少し腰を持ち上げ揺さぶる。
ハイジさんの眉間に皺が寄るのがわかった。
「それ、マズイ」
「マズイって?痛い?」
「いや…」
「……いい、ってこと?」
無言ということは、肯定したも同じ。
イタズラ心に火が付く。
下からそっと、跳ねるように腰を動かした。
「…っ、こら。駄目だ」
「だって、気持ちいいんでしょ?」
私、Sっ気もあるのだろうか。
ハイジさんが快感に耐えている姿を見ると、下腹部が熱くなる。
情欲を彷徨っている時のハイジさんは堪らなく色っぽくて、その艶に当てられてしまう。
そんな私の心中など知る由もなく、ハイジさんは腰を押さえつけてくる。
「確かに気持ちいいけど、二人でそうなりたい」
激しく杭が打たれる。
正に形勢逆転。
もうこうなったら、ただただ高い声を上げるだけ。
「はぁ、あっ、や、あぁ…っ!」
腕に抱かれ、裸体が密着する。
しがみつくみたいに抱きしめ返すと、奥の奥まで突き上げてくる。
「さつきっ…」
「も、だめぇっ、イッちゃ…ぁ、っふ、んっ、ああっ!」
「ああっ、このまま…っ、ぁっ…」
「ハイ、ジ…さ…っ…!」
二人分の呼吸が途絶えた。
そして、硬直していた体が一気に脱力していく。
無言のまま体を伏せ、息を整える。
その間、数十秒。
ああ、結ばれたんだなぁ…なんて思いながら首だけをハイジさんの方へ向け、お互いの顔を見合った。
「エッチだったね、ハイジさん」
「さつきには負ける」
「そんなことないでしょ…?」
乱れた姿を晒し過ぎたかな。
今更ながら恥ずかしくなってくる。
行為に没頭している間は半ば開き直っていたのに、一度冷静になってしまうと顔から火を吹きそうだ。
「もっと好きになったよ」
「…私も」
「こんなにも幸せな夜はない」
「…そんなこと言われたら、泣いちゃう」
微笑みながらハイジさんが抱き寄せてくれる。
涙ぐむ私の目尻を指で拭って、抱きしめて、髪を撫でて…。
そこに言葉はない。
けれど、ハイジさんが心も体も愛してくれているのだと伝わってくる。
幸せが込み上げて涙が出るなんて、どのくらいぶりだろう。
もう私には、訪れないことだと思っていた。