第6章 月夜に色づく ※
「も…、だめ、って、言っ…、のに…」
息も絶え絶えにしか声が続かない。
体が軽くなる。
私の上に覆い被さっていたハイジさんが少しだけ体をずらして、大きく息を逃した。
「乱れてる姿、堪らない。癖になりそうだ」
「もう…。こんな…休む暇もなく、気持ちいいことばっかり…。私、ハイジさんほど体力ないんだから…」
「無理させた?」
「ううん…そうじゃないけど…」
本気で困ったり辛かったわけでもない。
強いて言えば、ろくに運動していない人間の弊害というか…。
愛し合う行為の真っ只中に他のことなんて考えたくもないのに、息が切れる。更には体の柔軟性にも欠ける。
ただ、次々襲い来る快感に我をなくしそうになったのも本当。
ハイジさんの目にどう映るかなんて見失ってしまうくらい、乱れてよがって。
秘めていた私を、存分に曝け出している。
「じゃあ、さつきの好きなことを教えてくれ」
「好きなこと?」
「何でも。プレイでも体位でも」
正直言って、苦手なものならあるけど……。
「あ、先に断っておくとアクロバティックな体位は無理だ。そういうのが好みだとしたら、すまない」
確かに膝に負荷がかかるような体位はキツイだろう。
ハイジさんの言い分に納得する。
ていうか……
「アクロバティックな体位…?がよくわからないので、それは大丈夫です…」
「そうか」
「……このままがいい。特別なことはいらない」
ハイジさんの首に腕を絡め、体を密着させる。
「このままで充分気持ちいいから。ハイジさんの顔を、見ていたい」
ハイジさんのどんな些細な表情も見逃したくない。
そして、離したくない、絶対に。
もう、呆れるほどに夢中───。
「わかった。このまま、果てるまで」
「うん…」
天井を仰ぐ私に、ハイジさんが前傾姿勢をとる。
渇きを忘れた場所に留められたままの熱が、少しだけ動いた。
「次はもう、もちそうにない…」
「ハイジさんもイキそう?」
「ああ。必死に我慢してる」
「今、キュンとした」
「……どこでキュンとした?」
「内緒。イッちゃっていいからね?」
「一緒に、な」
一切の軋みもなくズルリと動いた猛々しい塊は、また私の最奥を突いた。