第5章 一等星
目頭が熱くなってくる。
込み上げて来るものを必死に堪えている側から、清瀬さんはまた言葉を繋げる。
「俺と、一緒にいてくれる?」
「私、清瀬さんの気持ち疑いました…。その上すぐ逃げるし、ヤキモチ妬きで……」
だから私は、選ばれない方の女だったのかもしれない。
卑屈で嫌なところばかり。
もし付き合っても幻滅させちゃうかも。
きっと今度は本当に気持ちが冷めちゃうかも。
でもここで手を取らなかったら、清瀬さん、もう二度と届かない場所まで離れていっちゃうかもしれない。
そんなことを考えたら怖くなる。
一旦立ち止まったところからまた一歩踏み出すには、堪らなく勇気がいる。
私って本当に情けない。
こんな私を知ったら…
知られてしまったら…
「知ってるよ」
「……え」
「そういうところも、愛おしいと思ってる」
「……」
どうしてそんな風に言ってくれるの?
そこまで想ってくれるの?
本当に温かくて、大きな人───。
「俺と恋愛できないなんて二度と言わせない。というか、もう俺のこと好きになってるだろ?」
私の知っている、快活で明瞭な清瀬さんが戻ってきた。
先程までのしっとりとしたムードはどこへ…?
ううん…きっと、敢えて空気を変えてくれたんだ。
それに気づきながらも、思わず笑いが込み上げてくる。
「ふ…、ふふふっ、すごい自信!」
「最初から自信があったんだ。風見さんと俺は、きっといい関係になれるって」
「逆に、清瀬さんに自信のない恋なんて経験あるんですか?」
「あったよ。自信がないから退いた恋も」
「……そうなんだ」
いつの話だろう。
ちっとも想像つかない。
けれどもう、他の女の人を羨んだり妬んだりする気持ちにはならない。
清瀬さんが見ているのは、私だけ。
自己肯定感の低かった私に、そう思わせてくれる。
"今日から君を口説き落とす"
あの日あなたは、今日と同じように自信満々にそう言って、笑っていた。
「観念しろ、風見さつき。君を受け止めるだけの器は持ち合わせているつもりだ」
いよいよ、彼の宣言どおりになりそうだ。