第1章 贖罪のサンタクロース/フロ監
「え!?やんなくていいって言ってたじゃん?!小エビちゃんひとりでやったの?!」
目を剥くフロイドに、ユウは胸を張って「勿論です!」と自身の胸を叩く。
私だってやれば出来るんですよ!と鼻を鳴らすが、フロイドはハァーと大きくため息を吐いて少女を再度抱きしめた。
「危ねぇから一人で料理とかマジ辞めてくんね?」
ゴツンと当てた額と額を擦り合わせてグリグリと左右に振り始めるフロイドに、ユウはケラケラと笑いながら「痛い痛い!それ痛いですっ」と身を捩る。
壁のような男に対抗する為に小さな身長に合わせて折った腰を擽ってやれば、フロイドは人間の言語とは程遠い音を喉から漏らしながら飛び退いた。
「こーえーびーちゃーん!!」
まるで怨嗟の如く唸るウツボに、小エビはやっぱりケラケラと悪戯な笑い声を上げるのだった。
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「え、小エビちゃん。マジでこれ……ひとりで?」
「勿論ですっ!小エビだってやれば出来るんですよ」
ふんすと鼻を鳴らすユウに、フロイドは開いた口が塞がらなかった。
壁に飾られた歪なオーナメント。クリスマスのディナーにしては少々貧相にも見える食卓。
その前に腰掛けていたフロイドがぐるりと部屋を見回して、並べられた料理を静かに見つめて言葉を失う。
少女がニヤニヤとしながら「どうですか、びっくりですか」と驚いた顔を拝んでやろうと覗き込むが、その前に抱きしめられてしまって目当ての表情を拝むことが出来なかった。
「フロイド先輩?」
「ん、何か。すげーなって」
呟いた彼に、ユウは僅かに睫毛を伏せて少しだけ笑む。
「……小エビだってやれば出来るんですよ」再度同じ台詞を言えば、「そだね」とその鋭利な歯列からは想像出来ないような穏やかな声音が返って来た。
暫くその温もりを堪能して、シチューが冷めるから食事にしようとユウが促す。
頷いたフロイドが小さな頭をひと撫でして。
二人だけのクリスマスパーティーの始まりとなった。
「何この生ハム? 事後のティッシュ?」
「ち、違いますよ! 薔薇ですっ、ばーらー」
「あはっ、ティッシュにしか見えねぇ。ウケんだけど」
「いやいやコレ滅茶苦茶大変だったんですよっ」
そんな風にして程なくして食事を終えて。
今度はフロイドが魔法でモストロラウンジから取り寄せたシャンメリーとグラスでクリスマスらしくオトナな雰囲気を楽しむ。