第5章 Dye Me In Your Hue/フロ監
お邪魔しました。と立ち上がるジェイドに、また馬鹿なマブが「待ってください」と声を掛けるものだから、デュースはやっと落ち着いた心の内がまた騒ぎ始めて頭を抱えそうになる。
「ユウにとってフロイド先輩は、信用できる人なんスか」
「馬鹿っ、お前っ」
あぁもうとんでもない馬鹿だ。身内に聞くことじゃないだろう。デュースはとうとう頭を抱えて項垂れた。
もう怒られてしまえ、と馬鹿なマブを見限って食事に手をつけはじめるが、やはり心の内は穏やかではなくチラチラと二人のやりとりに視線を向けてしまう。
ジェイドは一度、フロイドとは逆の明度の違う双眸をパチクリとさせて、目元だけで笑ったように平べったく細める。
「貴方はどう思われるのですか」
唇の下に人差し指の背を沿わせたまま、ニィと弧を描けば僅かに鋭利な歯列が顔を出した。
知らないからな、もう俺は知らないからな。デュースは心の中で何度も呟きながらも、視線は忙しなく二人を行き来している。
「……分かりません。ユウの過去のことも聞いたばっかで。でも、それを出汁にフロイド先輩が何か腹の底で良からぬこと考えてる気がするって、言うか……なんか嫌な感じ、するっていうか……」
「ふふ、ではそれが正解なのでは?」
ジェイドは何てことないかのようにニッコリと微笑んでいる。デュースは思わず口に含んでいた米粒を吹き出し、グリムとエースの眼光が途端に鋭くなった。
「狩るか狩られるか、の世界で長く生きた僕には、貴方が言う信用というものが正直理解出来ません。生憎、陸では二歳児の稚魚と同じですので。まぁ、双子の兄弟としてひとつ言える事があるとすれば……フロイドは監督生さんが望まないことは ・・・・・・・絶対にしません」
フロイドは監督生さんのことを大切に ・・・していますよ。そう付け加えて穏やかに微笑んでいる。
「え、じゃぁフロイド先輩ってユウのこと……」
「っざけんな!」
立ち上がったエースの声が食堂に響き渡る。喧騒が一気に静まる食堂内で、エースはギチリと歯噛みした。
苦しむユウを愛おしそうな瞳で見つめていたフロイド。それは愛するものに向ける目であったが、少女を闇の中に堕とすつもりではないだろうかという不信感がエースの脳内を蝕んでいた。