第5章 Dye Me In Your Hue/フロ監
誰も気が付かなかったが、ジェイドの手には肉やらサラダやらが馬鹿みたいに積み上げられたワンプレートが片手に持たれていた。
それをドンと鈍い音を立てて置き、ユウが残していたリゾットをまじまじと見つめる。
「こちら、頂いても?」彼の行動に呆気に取られていたユウは「ど、どうぞ」と何度も瞬きをしながら了承すると、にっこり笑ったジェイドは「ありがとうございます」と大口を開けて食事開始したのだった。
いつの間にかこのテーブルに注目していたモブたちは、各々心の中でツッコミを入れ始める。
なんだあの量は。止めに入ったんじゃねーのかよ。よくこの雰囲気の中飯が食えるな。だがしかし自身の命が大切な賢いモブ達は、それを口から出すことは無い。
「そういえばフロイド。監督生さんのお顔の色が優れなかったのでは?」
あくまで食事から視線を外さないジェイドが止まった空気を変える。はっ、としたデュースもすかさず乗っかった。
「そう、そうだ。ユウ!今日はもうゆっくり休め!先生方には俺からちゃんと説明しておくからっ」
フロイドの腕からエースを無理やり引き剥がし、気分屋のフロイドがこれに乗っかってくれることを祈りながら長身を見上げる。
先ほどまでの獲物を狙う光が失われていたフロイドは、はぁ、と息を吐き出して気だるげな半眼で腕についた皺を見てもう一度ため息を吐いた。
ジェイドのお陰ですっかり陰惨さは霧散してしまったらしく、デュースやグリムがホッと胸を撫でおろす。
「んじゃぁ、ジェイドあとよろしくー」
「いや、あのっ……」
小エビは黙って俺に連れられてな。
有無を言わさぬフロイドの物言いに抱かれていたユウは、キュッと口を引き結んで揺れ始める彼の腕の中で大人しい小エビになることを決めた。
デュースは不安定に揺れて歩いていくウツボの背が消えるまで見つめた後、とりあえずこの馬鹿なマブの話でも聞いてやるか。と未だに眉間に皺が寄ったままのエースに座るように促して自分も席に着いた。
が、忘れてはならなかった。ここ居たウツボはフロイドだけではないということを。
「ご馳走様でした」
どんな速さであの特盛ワンプレートの中身を胃の中に送り込んだんだろうか。すっかり綺麗になった皿としゃんとした姿勢で手を合わせるジェイド。