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600秒の夢境【twst短編集】

第5章 Dye Me In Your Hue/フロ監


 明度の違う双眸を眇めて唇を尖らせるフロイドに、ユウは弱々しくはい、と答えるしかなかった。
「あ、そーだ。コレいつものやつ。今飲めそ?」
 フロイドは胸ポケットから小瓶を取り出すとユウに手渡した。とぷり、と中で揺れる液体は彼が持つ髪によく似た色をしている。
 精神を落ち着かせる効能がある魔法薬。アズールが毎度調合してくれているそうで、三日に一度フロイドが持ってきてくれている。
 ユウは手渡されたねっとりとした液体を躊躇なく煽り、空になった小瓶をフロイドに返した。
「ありがとうございます。あの、これのお金……」
「だぁかぁらぁ」「「俺が望んでやってんの」」
 フロイドは目を丸くした。言った言葉尻にユウの声が重なったから。
 今度はユウが悪戯に笑って、お互い目を見合わせた。
「ふはっ、小エビちゃん俺のことよく分かってんじゃん」
「ふふっ、お褒め頂き光栄です」
 フロイドがユウの髪を両手でくしゃくしゃと撫で回した。ユウはそれを素直に受け入れながら、平べったく細めた瞳いっぱいに彼を映す。
 彼のゴールドとオリーブの瞳に染まる自身が映し出されていて、それが酷く安心した。
 


✳︎



 沈む。深く深く堕ちていく。
 一筋の光すら届かないこの場所は、痛い程の静寂で刺すように冷たかった。
 音も色も無く恐怖で狂ってしまわぬように、見えぬカラダをひたすらに掻き抱いて縋る。
 薄らと開いた闇と同じ色の瞳で小さな金の光を見つけて、そうして私は少しだけ微笑むのだ。







 真っ白なプレートに乗った褐色は、目の前に座る少年の髪色によく似ていた。
 螺旋を描く中心に少年は躊躇なくフォークを突き立てると、クルクルと回して絡ませる。
 三分の一程を巻き付けたそれは、大きく開かれた口の中へと綺麗に収まった。
「お前さぁ、マジでへーきな訳?朝から顔色すっげぇ悪ィけど」
 片頬を歪に膨らませたエースは不機嫌そうに眇めた瞳で、目の前でリゾットを行儀よく口に運ぶユウを見据える。
「大丈夫だって。ちょっと疲れてただけだから」
 血色の無い顔で微苦笑を浮かべるユウに、エースは更に不機嫌そうに眉を顰めた。
 その隣でデュースがまぁまぁ、とエースの肩を数回叩く。
「俺様も、心配なんだゾ。ここ最近のオマエ、時々しんどそうなんだゾ」
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