第5章 お見合い
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どうりでデカいバッグ持ってる訳だ
なんて思いながら翔くんの話を聞く
「でさぁ、眠れねぇ眠れねぇって思いながら夜遅くまで起きてたら、朝寝坊しちゃって目ぇ覚めたらもう昼前だったんだよね?」
「うん」
「で、やべぇやべぇっつってうろうろ家の中を徘徊してた訳よ」
「うん」
「そしたらさぁ、母さんがいい加減諦めて落ち着きなさい
もうすぐ生涯の伴侶となるお嬢さんが見えるんだから、なんて言うもんだからさぁ
俺、何勝手に結婚するって確定してんだよって言ったんだよね?」
「うん」
「そしたらさ、もう今日の内に結納を済ませるって先方と話がついてるとか言われてさぁ」
「うん」
「そんで俺
冗談じゃねぇよ、俺は誰とも結婚しねぇ、俺には心に決めた人が居んだよふざけんなよっつってさ
…おん出て来ちゃった訳なのよ。」
「はあ。」
一頻り説明を終えた翔くんは
僕の間の抜けた返事を聞いて、深い溜め息をついた
「………ダメだったかな?」
「まあ、あんまり良くはないんじゃないの?」
「………やっぱりか」
「けど」
僕は、項垂れる翔くんの手を両手で握って
にっこりと微笑んだ
「翔くんにしては、上出来なんじゃない?」
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