第5章 お見合い
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「な、なんだよいきなりっ…!?」
「早くしないと見合い相手が来ちゃうだろ!!
俺、顔合わせたくないんだよっ!!」
「はぁあっ!?」
「兎に角行くよっ!!」
「えぇえっ!?(汗)」
「落ち着き先が決まったら連絡なさいよ~」
「えぇええっ!?(汗)」
僕は、母の何とも間延びした声を背に
何やら大きな鞄を持った翔くんに、訳も解らず引き摺られて行った
「ちょっともうっ!!訳わかんねぇよちゃんと話せよ!!」
引き摺られながら文句を言う
と、翔くんが足を緩めずに僕を引っ張りながらそれに応えた
「とりあえず今夜泊まるホテル行こう!」
「はぁああっ!?」
「部屋で落ち着いて話そう!俺今若干パニクってっからっ!!」
「…………」
多分、若干じゃないだろ
とか思いながら僕は、仕方なく駅まで翔くんに引き摺られて行った
「翔くん、もう手ぇ離せよ
痛いわ」
「ああ、ごめんごめん」
駅に到着すると、ちょっとは落ち着きを取り戻したのか、翔くんが漸く掴んでいた僕の手を離してくれた
見れば、手首に翔くんが掴んだ痕がくっきりと赤く残っている
「あ~…マジごめんね智くん、俺必死で…痛かった?」
翔くんは、赤くなった僕の手首を見て、申し訳なさそうに眉を下げた
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