第5章 お見合い
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「じゃあな翔くん
明日、しっかりやれよ」
「……うん」
「逃げんなよ
ちゃんと男を見せろよ」
「……うん」
「見合い、ちゃんと断ったら夜…
…一緒に、ホテル行こうな」
「うんっ!!」
「…………(苦笑)」
“ホテルに行こう”って僕の台詞に食い付く君に苦笑いしながら
僕は、軽く手を上げた
「…んじゃ、おやすみ翔くん
また明日ね」
「うん、おやすみ智くん
愛してるよ!」
「…ハズいこと言うなや///」
「あははは、照れてる智くんちょー可愛い(笑)」
「…ばーか、早く家入って寝ろ!///」
僕はそう言って翔くんに背を向けると、足早に家の中に入って行った
「ただいまぁ」
「おかえり智
今日は随分遅かったわね」
家の中に入ると、母親の不機嫌そうな声が僕を出迎えた
僕は、言うほどそんなには遅くないのになぁって思いながら、母が居ると思しきリビングへ向かった
「なに?機嫌悪いじゃん
どうかしたの?」
「…お隣の翔ちゃん、明日自宅でお見合いなんですってよ」
母は、リビングのソファーに深く座り込んでお茶を啜りながら、また不機嫌そうに言った
「…うん、そうだってね」
珍しく不機嫌な様子の母親に戸惑いながら僕が返事をすると
母は、ちろっと僕を横目で見た
「翔ちゃん、流石にもう逃げ出せないわね、お見合い」
「うん、そうだろうね」
「お見合いしたらもう、即結納するみたいな事言ってたわよ、隣の奥さん」
「へえ、そうなんだ」
「………あなた、本当にそれで良いの?」
「………え?」
思いがけない母親の台詞に思わずポカンとする僕
そんな僕に、母が更に思いがけない事を言った
「翔ちゃん結婚したらお隣で住むのよ?
あなたそんな近くで翔ちゃんの新婚生活なんか見れるの?」
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