ヴォード家に嫁ぎました!【ブラッククローバー / R18】
第2章 籠の中の鳥
わたしはヴォード家の中で自分の部屋の他にも落ち着ける場所を見つけた。それは中庭である。滅多に誰も来ることがないので1人になれる。風に当たりながら昼は太陽の光、夜は月明かりを浴びる。何も考えずにぼーっとしながら紅茶を飲む。それが日課になっていた。
最近はそこにフィンラルさんが来てくれて、2人で話しをすることが多くなっていた。いつの間にかそれが当たり前になって、2人分の紅茶を淹れてフィンラルさんを待つようになっていた。
────とある日
わたしは用事を済ませていつものように中庭のベンチに座っていると、廊下の方から聞き慣れた声が聞こえてくる。
「ミライさん!今日もお綺麗ですね!」
フィンラルさんはそう言うと、わたしの隣に座った。フィンラルさんは毎日必ず、わたしのことを綺麗だと言ってくれる。気さくでとても優しくて、女性を喜ばせる言葉や気遣いが上手な人だ。
「フィンラルさん、修行お疲れ様でした!疲れたでしょう?」
「お気遣いありがとうございます。毎日のように俺がここに来ちゃって、ミライさん迷惑ですよね……」
「……え?そんなことないですよ?わたしはフィンラルさんとお話しするのが楽しみなんです」
フィンラルさんは顔を赤らめて、わたしから目を逸らした。
「ミライさんにそう言ってもらえるなんて嬉しいな!でも俺は弟に勝てることが一つもないんです……」
「そんなことないですよ……?フィンラルさんはとても優しくて、わたしのことをいつも気にかけてくれて……素敵な方です!わたしは魔力が全てだなんて思っていませんから」
「ミライさん……」
突然、フィンラルさんにふわっと抱きしめられる。
「す、すみません……!こんなことして……」
フィンラルさんは慌ててわたしからパッと離れた。
「ふふ、嫌じゃなかったです……不思議……わたし好きでもない人と結婚なんて、と思っていたのに今はフィンラルさんに惹かれている気がします」
「……え?そ、そんな……俺もミライさんに初めて会った時に一目惚れしたんです……でも……次期当主は弟になると思います……」
「……え?どうしてですか?フィンラルさんが長男なのに……そんなの、嫌……」