ヴォード家に嫁ぎました!【ブラッククローバー / R18】
第2章 籠の中の鳥
「俺は攻撃魔法を覚えることができなくて……それはヴォード家としては許されないことなんです……次期当主は弟に任せるつもりです……」
「そんな……わたしはフィンラルさんに時期当主になってもらいたいです……ランギルスさんは確かに何でもできてすごいです……だけど、わたしの中ではフィンラルさんの方が特別なんです」
「俺……黒の暴牛にスカウトされたんです。所謂、裏口入団ってやつなんですけど……暴牛のヤミ団長はこんな魔法しか使えない俺を選んでくれたんです。だから、黒の暴牛に入団を決めました。暴牛は最低最悪の魔法騎士団だって悪評が立ってますから、親にはヴォード家の恥晒しって言われちゃいましたけど……」
黒の暴牛団の悪評を耳にしていたが、このクローバー王国を守る精鋭団ということは変わらない。国民の中から選ばれし者として魔法騎士団に入団できること自体が素晴らしいことである、とわたしは思っていた。
「すごいじゃないですか!恥晒しなんて……そんなことないですよ?フィンラルさんはフィンラルさんらしい魔導士になってくださいね!わたしフィンラルさんのこと待っててもいいですか……?」
「ミライさん……俺、諦めません!弟には渡しません……俺が必ず次期当主になって、幸せにしてみせます……!」
「よかった……フィンラルさんがそう言ってくれて……魔法騎士団に入ってこの家を離れても、任務の合間に会いにきてくださいね?」
「もちろんです!」
このとき、わたしたちの会話が誰かに聞かれているとは思ってもいなかった────……
────その日の夜
食事の時間になってもランギルスさんが食堂に来ないため、お母様に呼んでくるように言われる。
「ミライさん、ランギルスさんを呼んできていただけるかしら?ごめんなさいね……」
「はい、わかりました」
わたしたちの各部屋はみんなで過ごす大広間から離れている。ヴォード家は敷地が広く、歩いて5分はかかるくらいだ。ランギルスさんとは普段からあまり話すことがないので苦手意識をもっていた。嫌だな、と思いつつも重い足取りで部屋に向かった。
コンコンッ────……
「ランギルスさん、お食事のお時間ですよ?」
何度かノックをしても全く応答がなく、寝ている可能性もあるため部屋に入ることにした。