ヴォード家に嫁ぎました!【ブラッククローバー / R18】
第2章 籠の中の鳥
ヴォード家に来てから月日が経ち、ここでの生活もだいぶ慣れてきていた。とはいえ、ずっと家にいられるわけではない。ヴォード家時期当主の許嫁として、舞踏会や食事会に連れ回される日々である。立ち振る舞いや作法は子供の頃から教え込まれていたが、家柄によって違いもあり新たに覚えることも多かった。
兄弟である2人は毎日のように、お父様といっしょに魔法の修行をしていた。お母様が言うには2人の入団する魔法騎士団はすでに決まっているそうだ。今日も2人は魔法の修行をしていた。たまたまその場を通りかかったので物陰に隠れて見ていた。
フィンラルさんが壁に向かって空間を作っている。
「フィンラル!何だその軟弱な魔法はっ……!」
「お父様……申し訳ありません……」
すると隣にいたランギルスさんが手を振りかざし、その瞬間、空間を切り裂くかのように壁が壊れた。ヴォード家は空間魔法の名門と聞いていたが、生で見るのは初めてなので圧倒される。
「ランギルスの攻撃的な魔法を見習え!何をしている!フィンラル!ヴォード家の名が廃るっ……!」
お父様はフィンラルさんに怒鳴りつけ、その場から去っていった。
「かわいそうに……兄さんのクセに僕に勝てることが何一つないんだね……」
ランギルスさんはフィンラルさんに向かってそう言い捨てていた。フィンラルさんは何も言い返さない。お兄さんに向かってあんな言い方……失礼な人だと思った。
わたしがヴォード家に来てから、フィンラルさんは毎日のように気さくに話しかけてくれていた。お父様やお母様がいる時は気を張っていなければならないが、フィンラルさんと話すと気が緩んで自然体でいられた。一方、弟のランギルスさんはいつもわたしに無愛想で何を考えているのかわからなかった。
この家では魔力が全てかもしれない。それでもフィンラルさんをあんな風にバカにするなんて相当ひねくれている。わたしがランギルスさんを好きになることなんてこの地球が終わるまで絶対にありえない、そう思った。
時期当主は長男のフィンラルさんであってほしい。あんなにひねくれた人と結婚なんてしたくないからだ。当主になるには魔力だけではなく、人柄も大事だとわたしは思う。だがヴォード家は魔力が全てという価値観だった。