ヴォード家に嫁ぎました!【ブラッククローバー / R18】
第2章 籠の中の鳥
お母様に連れられ、大広間から離れた部屋に案内される。
「ここがミライさんのお部屋ですわ。どうぞ、中に入って?」
「こんなに広いお部屋を与えていただいて、大変恐縮です……ありがとうございます。」
「あとでうちの子たちを紹介しますわね。」
お母様はそう言うと、部屋から出ていった。
先ほどまで気を張っていたせいか、どっと疲れてしまった。今日からここがわたしの部屋になる。ヴォード家にいても、この部屋にいる時間は1人になれる。本当のわたしでいられる唯一の空間だ。
大きなベットに横たわる。目を瞑ると、気疲れからか睡魔が襲ってきた。
うとうとしかけていたわたしは、突然扉を叩く音にハッとして起き上がる。身なりを整えてドアを開けると、お母様に連れられた2人の青年がいた。わたしよりも少しだけ年下だろうか。
「紹介するわ。中に入るわね。」
「は、はい。どうぞ。」
わたしがそう言うと、お母様と2人の青年が部屋に入ってきた。
「こちらがヴォード家の次期当主の許嫁であるミライさんよ。由緒ある家柄で、見ての通りとってもお綺麗なお方よ。」
お母様がわたしを2人に紹介すると、2人の青年はわたしを見て軽く会釈をした。1人は顔を赤らめてわたしをずっと見ているが、もう1人はすぐにわたしから目を逸らしてなんだか無愛想に感じた。
無理もないと思った。今日初めて会った人が将来の結婚相手です、と紹介されてもいまいちピンとこないはずだ。
「こちらがうちの長男のフィンラルと次男のランギルスよ。これから2人は魔法騎士団に入る予定なのよ。ぜひ仲良くしてくださいね。」
「こんにちは。よろしくお願いいたします。」
お母様に2人を紹介されたのでわたしは2人に挨拶をした。次男であるランギルスさんはわたしの挨拶も聞いていない様子で目も合わせない。率直に苦手だな、と思った。
一通りの挨拶が終わると、お母様と2人は去っていった。
兄弟揃って紹介されたが、時期当主は長男のフィンラルさんに決まっている。世間的な常識を言えば、跡継ぎは長男がするものだからだ。
わたしはなるべく兄のフィンラルさんと仲良くしておこうと思った。それに、彼の方が話しやすそうな印象だった。弟のランギルスさんはというと無愛想で気難しそうだな、と思った。