ヴォード家に嫁ぎました!【ブラッククローバー / R18】
第2章 籠の中の鳥
わたしはこのクローバー王国の由緒ある名家で生まれ育った。小さい頃からこの王貴界で生きていくための立ち振る舞いや作法を厳しく教えられてきた。
もちろん友達は選ばなければならなく恋愛なんてもっての外。異性交友はご法度である。好きな人さえつくることができない環境であった。
わたしを取り囲む人たちはもちろん王族と貴族だけ。平民と仲良くすることは許されなかった。ただ、ひたすらに親の決めたレールの上を歩くだけの人生でわたしには自由がなかった。これからもずっとそうだ。
わたしが小さい時から結婚相手も決まっていた。わたしの意志なんてどこにもなくて、親に逆らうことなんてできない。わたしは今日、とある名門貴族の元へと嫁ぎにいくのだ。
この家から出てそこへ行っても、また同じことである。もはやわたしの人生ではない。そう、ずっとずっと籠の中の鳥のまま────……
────攻撃型空間魔法の使い手を数多く輩出する名門貴族、ヴォード家。
親に連れられて、わたしはその門に足を踏み入れた。親同士が話しをしている間、わたしは黙って聞いていた。
「まぁ……小さい時から可愛らしいお嬢様でしたけど、大きくなってこんなにお綺麗になって……うちの子たちには勿体ないくらいですわ!」
「そんな……滅相もございません!娘を由緒あるヴォード家に嫁がせていただき、こちらこそ感謝しております。」
わたしの親も相手の親も、肩書きに食いついているだけで、子供のことなんて何にも考えていない。呆れて言葉も出なかった。笑顔を貼り付けてその場にいるだけの親の操り人形である。
だからと言って逃げる勇気もないし、お伽話のように王子様が現れて駆け落ちだなんて現実にはありえないのだ。
「では、うちの娘をどうぞよろしくお願いいたします。」
「もちろんですわ。」
一通りの話しが終わると、わたしの親はわたしをこの場に置いて帰っていった。名残惜しさも感じられなかった。わたしは名声を手に入れるための道具だったんだ。
「お母様、このヴォード家に相応しい女性になれますように誠心誠意努力いたします。よろしくお願いいたします。」
わたしは深々と頭を下げた。この家で生きていくためにはまずお母様に気に入られなければならないことはわかっていた。
「まぁ……よろしくお願いしますわね。」