ヴォード家に嫁ぎました!【ブラッククローバー / R18】
第6章 決意
咄嗟にランギルスさんの背中の制服を掴んだ。
「……どうしました?」
ランギルスさんは少し驚いた顔でわたしの方に振り返る。
「あ…あのっ、ランギルスさんはわたしのこと、どう思ってますか…?」
掴んだまま、ランギルスさんの顔を見上げた。ランギルスさんは少し困った顔をしてため息をつく。わたしから目を逸らし俯いた。
「……ミライさんはどうなんです?前に兄さんが好きだって言ってたじゃないですか。僕がミライさんをどう思っていても、ミライさんには関係ないことでしょう?」
「…そうですよね。引き止めたりしてごめんなさい」
わたしは掴んだ制服から手を離した。ランギルスさんはそう言い終えたあと、じゃあと言って店内に戻っていった。
わたしはその場に立ち尽くした。この気持ちが何なのか、恋愛経験のないわたしでも薄々気づいていた。ランギルスさんの気持ちを知りたいと思っていながら、聞けなかったのも怖いからだった。
自分の気持ちを伝えずにランギルスさんの気持ちを聞こうとするなんて、なんてずるいんだろう。今までフィンラルさんが好きだと言って、ランギルスさんを傷つけておきながら、今更わたしがどうこう言える立場じゃないのに…
わたしはランギルスさんが──…
「ミライさん、遅かったですね?心配しましたよ!」
「少しお腹が痛くて…心配かけてしまってすみません…」
フィンラルさんはわたしの顔を見た。心配してくれているのがひしひしと伝わってきて、申し訳なく思った。わたしはもうランギルスさんの席を見ることができなかった。
「そろそろ行きましょうか!」
「そうですね!」
しばらく王都でお茶をしたり買い物をしている間に、空がオレンジ色になりかけていた。
「楽しかったです!日が沈んできましたし、そろそろ帰りましょうか?」
わたしがそう言うと、フィンラルさんが立ち止まる。
「……まだ帰りたくないです。ミライさんに見せたい景色があるんです。いっしょに来てくれませんか?」
フィンラルさんはそう言って、空間を作った。わたしは戸惑いながらも、フィンラルさんの気持ちを考えると断れず空間の中に入った。