ヴォード家に嫁ぎました!【ブラッククローバー / R18】
第6章 決意
ランギルスさんのことを考えてしまう自分がいた。最初はランギルスさんのことが苦手だった。ひねくれてて素直じゃないし、フィンラルさんのことをバカにしてばっかり。いつも乱暴で何考えてるかわからなくて。
でも少しずつランギルスさんのことを知っていくうちに、背負うものの大きさやヴォード家の跡継ぎの重圧、小さいときから人一倍努力してきたこと。誰にも本当の自分を見てもらえないこと。魔力が強くなければ誰も自分を認めてくれないこと。ランギルスさんが弱さを見せたのは、きっとわたしが初めてだと思う。今まで誰にも言えずにずっとずっと苦しかったんだ。
でもランギルスさんはわたしを好きなわけじゃないと思うんだ。
わたしはどうなんだろう──…
会えない日もランギルスさんのことばかり考えてる自分がいた。
フィンラルさんと話しているうちに料理が運ばれてきた。
「いただきます」
フィンラルさんと他愛もない会話をしながらごはんを食べていると、斜め右の席に案内された2人組の男女が視界に入った。
間違いなく金色の夜明け団の制服。わたしから見て奥の席に座っているのは…間違いなくランギルスさんだった。ランギルスさんはわたしたちに気づいていないようだし、フィンラルさんの席からも見えない。わたしはいつのまにかフォークを動かす手が止まっていた。
「ミライさん?どうかしましたか?お腹いっぱいですか?」
フィンラルさんがわたしの様子をおかしく思い、心配そうに聞いてくる。わたしはその声にハッとして言わない方がいいと思い、首を振った。
「い、いえ!なんでもありません…」
「無理しないでくださいね?」
フィンラルさんは優しく声をかけてくれた。
わたしはなぜか息苦しくなり、深呼吸をした。だが胸にはモヤモヤした何かが残っている。
ランギルスさんのことが気になって仕方がない。対面で座っている女の人に笑いかける姿が目に入る。わたし以外にもそうやって笑って話せる人がいるんだ。
よかったって思うべきなのに、どうしてこんなに胸が苦しくなるの?息がしずらくて、苦しい。このままだとフィンラルさんに気を遣わせてしまう。
「すみません。お手洗いに行ってきますね」
そう言ってその場を離れ、お手洗いへ向かった。