第1章 プロローグ
伯爵位でありながら、資産は国のトップクラスだ。
今回イザークとの婚約を受け入れたのはすき勝手する叔父から離れ復讐するため。
膨大なお金を使い込み様々な事業に失敗してきた。
その上贅沢の限りを尽くし自身は自分の小さな領地に一切関与せず悠々と暮らしている。
そして、両親を事故に見せかけて殺した張本人。
お母様のお腹には子供がいたのに。
鈴を鳴らしメイドを呼ぶ。
「お茶を片付けて、私の部屋に改めて暖かいお茶を淹れて。」
「かしこまりました。」
片付ける様子を無気力に眺める。
生きる希望などない。
ただ両親の無念を晴らすため。
社交界にでて政界で力をえれば叔父の罪を裁くことができる。
そうしたら、そうしたら私はどう生きていけばいいのだろう。
結婚して幸せに生きていく未来を描くことができない。
だからこの婚約は正直気が進まない。
彼は将来期待されている人物だ。
それなのに無気力で目的を果たしたら死んでもいいと思っている自分と婚約するなんて。
「可哀想な人」
「え??何か、」
「気にしなくていいわ。独り言よ。」
ポカンとするメイドを横目で見ながら自分の部屋に向かう。