第2章 デビュッタント
「衣装の準備は終わりましたか?」
いつものように飽きもせずイザークが屋敷に足を運ぶ。
「はいすべて注文済みです。」
「それは楽しみです。きっと綺麗でしょう。」
きっと私でなければ頬を赤らめてしまうだろう。
しかし適当な社交辞令としか受け取ることができない。
「母上も娘がいないのでとても楽しみにしています。」
「そうですか。」
あと何度このつまらない会話を続けないといけないのだろう。
「明日、一緒に出かけませんか?」
「え、?」
急な提案に思わずカップに伸ばした手を止めてしまった。
「せっかくなので、髪飾りでも何かプレゼントしたいのです。何か予定はありましたか?」
「いえ、その、、」
「では明日同じ時間にまたきますね。」
滞在時間はわずか15分。
こんな退屈な時間をまた明日過ごしに来るのかと小さくため息をつく。
「おいイザーク、最近どうよ?」
「どうよも何もない、毎回毎回身のない会話をして退屈だ。」
遊び人のディアッカとはなぜか気が合う。
いちばん嫌いな人種なはずなのだが。
「でもめっちゃ可愛いらしいじゃん。お前の婚約者。」
確かに容姿は整っている。
まっすぐで生クリーム色の長い髪。
雪のように白い肌。
大きく美しい灰がかった紫の瞳。
細い肢体も庇護欲を掻き立てる。
「だが話していてもつまらん。」
「お前が女と楽しそうに話してる所なんて想像できないな。」
「ふんっ」
イザークとディアッカは既に社交界デビューをしている。
「おい、そんなに飲むなよ。」
いつも以上にお酒を飲むペースが早い。
「女に何かプレゼントする時どこにいく?」
「は?」
「・・・・なんでもない。」
「おい、イザーク!」
出ていくイザークを呼び止めようと思わず立ち上がるが伸ばした手を宙で止めた。
「全く、お前の友達やれるなんてオレぐらいだぜ。」