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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前



「ありがとー凪」
「どう致しまして」

彼方に礼を言われ、小さくはにかんだ後、空になったトレーを邪魔にならない位置に置くと、掘り炬燵へ再び腰掛けた。残るグラスは光秀の手にあるトレーに乗っており、彼は迷いなく危険な色をしているそれ─────ドリンクバーちょっとずつ全部混ぜのグラスを、秀吉の前に置く。

「三途の川で汲んで来たぞ」
「光秀さん、確かにこのお店ではそういう名前だけど、せめてドリンクバーって言って…!」
「本当に三途の川渡りそうな色してますね」

如何にも悪巧みしてますと言わんばかりの笑みを口元へ刻み、光秀がさらりと告げた。確かに間違ってはいないが、目の前に置かれているグラスの色を見ると色々と問題有りである。家康が若干半眼になり、思わず見たままの感想を告げた。秀吉の前に置かれた飲み物は、ある意味幸村のコーラよりも凄い色をしていた。色自体は割とコーラやアイスコーヒーのそれに似ているが、何だか色々と浮いている上に濁っている。ぱちぱちと小さな気泡がグラスの上部で弾けているのを見る限り、恐らく最後に注いだのはコーラなどの炭酸系であろう。他の面々とは明らかに一線を画すそれを前に、秀吉の眉間へ深々と皺が刻まれた。

「………おい光秀、なんだこれは」
「おやおや、これが一体茶以外の何に見える?」
「俺のこーらよりひでえ色してんな」

低い声で紡がれたそれに、光秀がやれやれと肩を竦めた。にべも無く返された光秀の一言に凪がはらはらしていると、幸村が歯に衣着せぬ調子でばっさり突っ込む。

「まさかとは思うが…いつもお前が食ってる飯みたく、全部混ぜたんじゃねえだろうな」
「ほう…?さすがは右腕殿。俺の飯の食い方に着目し、推察するとは恐れ入った」
「うるせえこの馬鹿野郎。お前のやりそうな事は大方予想がつく。…ったく、すげえ色じゃねえか」
「俺は混ざっていようが問題ないがな」
「お前はな!」

(いつもの光景だなあ)

秀吉と光秀のやり取りを見ながら和む、という芸当を見せた凪を彼方が若干心配そうに見た。喧嘩する程、等とは昔からよく言ったものだが、どちらかと言えばこれは光秀の一方的な悪戯である。

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