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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前



凪もそれへ同意するようおもむろに頷き、トレーを運ぶ男の姿を眺めていた。全員分の飲み物といえば、そこそこの重量だろうが、それが武将のしなやかな腕で軽々持たれている。光秀ならば五百年後の世であっても器用に生きそうだな、と考えていたところで、自分達の席に辿り着いた。どうやらまだ注文の品は届いていないらしい。

光秀からトレーをひとつ受け取り、それぞれの席へ凪が配って行く。ちなみに味は文字通り独断と偏見とイメージで選んでいる為、全員がばらばらだ。

「はい、家康。どうぞ」
「ありがとう……何これ、凄い色してるけど」
「メロンソーダだよ。甘くてしゅわっとするの」
「ふうん…」

家康の前に置いたのは鮮やかな緑の飲み物だ。グラスの上部に白い泡が軽く浮き、グラスの中で小さな気泡がぽつぽつと上へ上がって行っている。目にした事のないそれへ怪訝な面持ちを浮かべるも、凪に笑顔で説明されると、短い相槌を打って目の前のそれを見つめていた。

「三成くんはこれね」
「彼方様、ありがとうございます。こちらは…家康様のものと少し似ていますが、色が透明ですね」
「サイダーっていうの、五百後の世界の思い出に是非、このしゅわしゅわを味わって」
「未知のものを体感するというのは、己の見聞がより広がると言いますからね。お気遣いいただき、ありがとうございます」
「三成くん、真面目で良い人過ぎ、天使かな」

凪のトレーからグラスを取り、彼方が三成の前に置いたのは、家康と同じく小さな気泡が下から上へとぱちぱち細やかに弾けている透明な液体であった。家康の前に置かれたものと見比べていた三成が不思議そうに呟いた後、答えを得て天使の笑顔を浮かべた事に彼方が思わず真顔で突っ込む。

「兼続さん、どうぞ」
「ああ、すまない」
「兼続さんのは冷たい緑茶です。まだ飲んだ事なかったですもんね」
「こちらの世の茶は冷たいのか」
「温かいお茶もありますけど、今は夏なので冷たい方がいいかなって」

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