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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前



人前で紡がれた甘い言葉に凪の鼓動が大きく跳ね、唇がわななく。首筋まで真っ赤に染めた彼女が気恥ずかしさを紛らわせるよう、ぎゅっと繋いだ指先に力を込め、抗議の視線を送った。くすりと隣で吐息混じりの笑いが溢れる。金色の双眼を眇め、甘く、しかし意地悪く笑んだ。町中を歩いている時とは異なり、女性陣は光秀へ積極的に声をかける事はしなかった。画面越しに推しを眺める事に慣れている彼女等からしたら、さながら二次元から飛び出して来たかのようなイケメンは、触れず近付かず、眺めるだけで充分満たされるのである。

ドリンクバーに行く過程で恥ずかしい思いをするなど思っていなかった凪が、それでも繋いだ手を離さずに急ぎ足で目的地まで向かうと、彼方が既に人数分のグラスを用意してくれているところだった。

「来たね、バカップル。武将達の好み…と言っても分かんないだろうから、無難なの選んで行く感じでいい?」
「バカップルって言わないで!うん、それでいいと思うよ。光秀さんは何がいいですか?」
「お前が選んでくれればいい。どの道、味を語る舌は持ち合わせていない」
「じゃあ光秀さんっぽいものを選びますね」

彼方がそれぞれのイメージで無難に選ぶ事を告げると、凪もそれに同意を示す。バカップルと言われた事には些か頬を紅くしてむっとするも、すぐに光秀へ振り返り、問いかけた。現代の飲み物などよく分からない上、味についての感想もいつもの通りだ。凪に任せる旨を伝えると、彼女が頷いてするりと繋いでいた手を離す。大きな絡繰りのようなものにグラスを置き、色とりどりのボタンを押せばそこから液体が出て来る様を見て、光秀は緩く腕を組みながら目を僅かに瞠った。想像していた飲み物の汲み方とだいぶ異なる様を眺めた後、ふと傍に居る女子高生達二人が同じ絡繰りの前で楽しそうに話をしている。

「えー、まずいよー全部混ぜたら絶対やばい味するって!」
「ドリンクバーって言ったら取り敢えず全部混ぜが古からの王道でしょ」
「でもこれ誰が飲むの?罰ゲームみたいじゃん」
「じゃんけんで負けた人に飲ませるー」

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