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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前



凪が問いかけると、秀吉は決意を固めるかの如く、品書きにある己の名を視線で追う。自らの名がついたものを頼む、そう紡ごうとした刹那、隣に座っていた光秀が頬杖をつきながら口角をそっと持ち上げ、実に意地の悪い笑みを浮かべた。金色の眸が眇められる様は明らかな揶揄を孕んでおり、秀吉を揺さぶる気満々といった様子が顕著に見て取れた。

「なら、やはりここは信長様を……」
「本当にそれでいいのか、秀吉。如何に食い物とはいえ、信長様の名を冠したものだ。それを己の胃の腑へ飲み下すなど、それは謀反と呼んで然るべきとは思わないか」
「……くっ、た、確かに…!」

(生き生きしてるなあ…)

秀吉を右へ左へと揺さぶる様は、いつもの事ながら楽しそうだ。凪は内心で苦笑を零し、眇められた金色とそれを持つ端正な男の顔を眺める。隣のテーブルからそれを見ていた彼方が半眼になり、ぽつりと凪に向けて告げた。

「あんたの彼氏、驚くべきイケメンだけどちょい性格があれよね」
「まあ光秀さんだから…」

そんな事を話している内に、結局秀吉は自分の名のものに決めたらしく、彼方はちゃっかり推しである織田信長さんぱふぇを注文する事に決めていたのだった。それぞれが注文内容を固めた後、佐助が一番端に書かれていたものを見つけて、不思議そうに眼鏡の奥で三白眼を瞬かせる。

「彼方さん、この三途の川とは一体……」
「ああ、それドリンクバー。ここドリンクバー式なの」
「え」

事も無げに告げた彼方の回答に短く佐助が音を零す。こうして、武将達御一行はようやく注文の品を決め、各種戦国武将ぱふぇと三途の川を人数分注文し、その到着を待つ事となったのだった。


────────────────…


「じゃあちょっと私と彼方は飲み物取って来るね」
「武将達は行くと目立つから、佐助くんお願い」
「ああ、任せて」

注文を終えた後、おもむろに立ち上がろうとした凪と彼方を見て、兼続は些か怪訝な様子で眉根を寄せる。おしぼりの類は運んで来てくれるが、お冷などについては完全セルフ式だ。それが乱世育ちの武将達にとっては心底不思議らしい。

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