❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
「【明智光秀さんぱふぇ】?」
「皆の名が料理についているようだな」
凪が口にした【明智光秀さんぱふぇ】の他にも【豊臣秀吉さんぱふぇ】や【徳川家康さんぱふぇ】など、この場に居る武将達全員の名がついたパフェ名がずらりと勢力分布図と共に記載されていた。
「なんで飯の品書きに地図が載ってるんだよ」
「幸村、そこはデザインという観点だから、あまり深く突っ込まない方がいい」
怪訝な面持ちで突っ込みを入れた幸村を佐助が宥める中、彼方が嬉々として告げる。
「私まだこの戦国武将ぱふぇには挑戦した事なくて。せっかく本物が居るんだから、それぞれが自分のパフェ食べたらどうかなーって」
「なにそれ可愛い…!」
確かに武将本人が、その武将をイメージしたパフェを食べるというのは非常にレアな展開だ。明智光秀さんぱふぇを食べる光秀を想像した凪が、きらきらと面持ちを輝かせて声を上げる。嬉しそうな彼女を見て、そっと口元を綻ばせた光秀が、テーブルの上に置かれている凪の手へ触れた。
「お前がこの【明智光秀さんぱふぇ】とやらを食べるといい」
「光秀さん、またそうやって自分はいいって言うつもりでしょ。ちゃんと分かってるんですから。じゃあせっかくだし、二人で【明智光秀さんぱふぇ】半分こしましょう」
いつもの如く、自分はいいと告げる光秀に不服そうな眼差しを向けた後、凪が笑みを浮かべて告げた。機嫌良さそうな彼女の口から紡がれた、半分こという言葉に地味に弱い光秀は、やれやれと軽く肩を竦めた後、親指の腹でするりと彼女の手の甲を撫ぜる。一度伏せた金色の眼差しをそっと凪に向けて流し、口元へ緩やかな弧を描いた。
「聞き分けのない子だ。…だが、お前に半分食べられるというのなら、悪い気はしないな」
「み、光秀さんを食べる訳じゃないんですから…!」
「ああ、知っている。【明智光秀さん】を半分ずつ食べるんだろう?」
(光秀さんが言うと何か別の意味に聞こえて来る…!?)