❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
間に置いてあった仕切り用の衝立を取り去り、左側のテーブルには、右から凪、兼続、幸村、その正面が右から光秀、秀吉、佐助の順で座っていた。右側のテーブルは彼方が左端で、その隣が三成、彼方の正面には家康が座る形となっている。凪は左隣に座る兼続の方を向き、首を軽く傾げた。
「兼続さんは甘いもの、大丈夫ですか?」
「特に好んで食べる訳じゃないが、食べられない訳でもない」
「良かった。多分ここ、甘いの多めだと思うので」
掘り炬燵に座っていたとしても、兼続はすらりとした姿勢を崩そうとしない。胸下辺りで腕を組んだまま、彼女の問いかけに対して藤の眸を横へ流した男は、平淡な声色で静かに応える。どうにも好みが分かりにくい印象を抱きがちだが、嫌いという訳ではない事に安堵し、凪が口元を綻ばせた。そんな二人のやり取りを正面で見ていた光秀は、片肘をついて頬杖をついた後、しっとりとした声色に彼女の名を甘く乗せて呼ぶ。
「凪」
「……?はい」
呼ばれた後、すぐに光秀の方へ振り返って不思議そうに眸を瞬かせた。彼は片手でするりと机の端に立てかけられていた品書きを一冊手に取り、それを正面へ差し出す。彼方が手にしている様を見て、それが品書きだろうと見当を付けた観察眼の鋭さに感心しつつ、彼女が手渡されたものを両手で受け取った。
「どうやら品書きは二冊しかないようだ。お前が先に決めるといい」
「ありがとうございます。でもせっかくなので一緒に見ましょう」
そう言って凪は微笑み、【群雄割拠】の表紙を捲る。中には文字だけのメニューが縦書きでずらりと並んでいた。果たして字面だけではどんな料理なのか皆目見当もつかない様へ片頬を引き攣らせた凪は、それを皆で見れるよう机の中央寄りへ置く。佐助側にも置かれていたメニューを取り出し、それも同じくして中央へ置くと、武将達はそれぞれそこへ視線を向けた。
「ねえ、この参勤交代ってなに」
「家康さんのお孫さんが制定した、謀反の芽を摘み取る画期的な制度です」
「は……?孫?あんた何言ってるの」