❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
「やっぱり凪さんは大物だ」
彼方、家康、秀吉、佐助の順で口々に感想を零し合う様を、まったく状況を掴んでいない幸村が見て首を傾げた。
「つーかいつまでこの店の中居るんだ?ずっと居座ってたら店の奴らに迷惑かかっちまうだろ」
「こういう時、幸村の意外と常識人な突っ込みは本当に助かる」
「意外とは余計だ」
そんなこんなで幸村、兼続の着替えを終えた一行は呉服屋を後にして、当初の目的であった清水寺方面へと戻っていったのだった。
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外観、内装共に和風の雰囲気は何処となく懐かしさすら思わせ、乱世の気配を感じさせる。カウンター席以外はすべて小上がりの座敷席となっているそこは仕切りとなる衝立がテーブルとテーブルの間に置かれ、柔らかな座布団が設置されていた。小物や照明の類に至るまで、すべてが和の品で統一されたそこをぐるりと見回し、凪が小さく呟く。
「光秀さん、水色桔梗ですよ…!」
「ほう…これはこれは」
陽射し避けとなっている障子の枠、ひとつずつには様々な家紋が刻まれていた。その内にのひとつに光秀の水色桔梗を見つけ、凪が嬉しそうに小さく声を上げる。他にも信長の織田木瓜や家康の三つ葉葵、秀吉の桐紋、三成の九曜紋や謙信の上杉笹や幸村の六文銭、兼続の亀甲花菱など、様々な家紋が障子紙に印刷されていた。佐助や彼方は細部にまでこだわりを感じる内装に感動し、心無しかきらきらと眸を輝かせている。店内は女性客が多めだが、男性客の姿もちらほらあり、あちこちの席から武将の名が飛び交っていた。武将達からしてみれば、かなり珍妙な光景でしかないこの場所で、改めて凪は隣のテーブルに座った友人へ視線を向ける。
「ねえ彼方、ここってどういうお店?和カフェとか?」
問いかけたそれに対し、彼方が意気揚々と笑った。よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりの彼女が、立て掛けてあったお品書きを手にし、その表紙に金の箔押しで堂々たる貫禄を見せ付けた店名を指差しながら告げる。
「ううん、戦国武将カフェ【群雄割拠(ぐんゆうかっきょ)】」
(店名がまさに乱世…!!?)