❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
凪の疑問に佐助が応える。時間差でワームホールから吐き出されるなど、そんな事は経験がない為何とも言えないが、現に二人がこうして居るのだから事実なのだろう。新たに増えてしまった面々を彼方へ紹介した後、佐助が酷く言い出し難そうに告げた。
「はいはい、分かってる。今更一人二人増えようが大して変わんないしね。ただ、陣営違うからって喧嘩はなしだからね」
「世話になる以上は心得よう」
「まあな…余計な迷惑かける訳にもいかねーし」
(兼続さんと幸村が話の分かる人で良かったー…)
彼方はすぐに察し、片手をひらっと振ってみせる。念の為、安土勢への釘刺しも兼ねて告げれば、殊の外真面目な返答が兼続と幸村の二人から返って来た事に、凪が胸中で安堵と共に呟いた。これが佐助の言う通り謙信であったならばどうなっていたか、想像するだけで恐ろしい。
「なら、二人も俺達みたく着替えた方がいいんじゃないか?さっきみたいに目立って女達に囲まれでもしたら厄介だろ」
「……おー、あんなのは二度と御免だな」
先程の惨状を思い出し、秀吉が何処となく気遣わしげに告げる。さすがに右も左も分からない時代に飛ばされ、急に女性陣に囲まれてもみくちゃにされていた二人には、敵ながら同情を禁じ得ないといったところだろう。深々とした溜息と共にげっそり呟いた幸村を見ながら、凪は彼方へ振り返った。その視線の意図を察し、彼女はうん、とひとつ頷く。
「また全力疾走で逃げるのもこっちこそ勘弁だし、じゃあ行こうか。何の幸運か、さっきホテルに呼んだ呉服屋、本店がこの近くなんだよね」
「え、嘘。じゃあ走って来た甲斐があったね」
けろりと言ってのけた彼方が路地から顔を覗かせた。あれ、と指差したのは道路の向こうにある、如何にも高級呉服店といった店構えの店舗である。目的地だという清水寺方面からは少々遠ざかってしまったが、結果オーライであるその事実に一行はひとまず頷き合い、呉服店へと向かったのだった。