❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
「いやほんと、あんたの元カレの祖先って真田幸村だったの?ってくらい似てるんだけど」
「……私も正直、今さっき改めて見て思った」
「だよねー。あ、でも安心して明智さん。その元カレ、数日で別れた最短記録保持者だから」
本能寺の変があった夜にも、うっかり崖へ突っ込みそうになったところを助けてもらった恩があるが、その時は逃げる事に必死だった点と、夜という事もあってあまり顔を認識出来ていなかった。しかし改めて先程逃げる時に幸村の顔を見た時は、思わず我が目を疑ったものである。似すぎも似すぎ、激似である。片手をひらりと振った彼方が光秀に対して告げると、彼は小さく笑って肩を竦めた。
「それはそれは。さぞ凪の逆鱗に触れる事でもしでかしたんだろう」
「みみみ、光秀さん、それ以上は駄目…っ!」
光秀にはなんやかんやの経緯で、胸小さい事件を打ち明けている。彼方は知っているが、他の武将達の耳に入るのはさすがに恥ずかし過ぎるというものだ。両手を男の口にあてがい、必死に言葉の先を封じた彼女へ可笑しそうにくすくすと笑いを零した男を横目に、彼方はこのカップルの日常を垣間見た。
「お待たせ。二人には何とか理解してもらった。飛ばされたのが謙信様や信玄様じゃなく、この二人だった事は不幸中の幸いだ」
程なくして、佐助が幸村と兼続の二人を連れ、説明を終えて戻って来た。確かに謙信が現代に飛ばされて来ていたら、色んな意味で危険である。信玄もまた、女性を見ると速攻で口説きにかかる為、大変そうだ。凪が内心で納得していると、兼続が端正且つ清冽(せいれつ)な面へ眉根を寄せ、軽く胸下辺りで腕を組みながら告げた。
「佐助、発言を改めろ。謙信様はいつの時代に居られても、その気高い存在感が失われる事はない」
「むしろ存在感あり過ぎなんだよ、あの二人は」
兼続の言葉に対し、即座に突っ込みが入る。欲しい時にそれを与えてくれる存在、幸村の登場は佐助の心を大いに感動させた。ただし表情はまったく変わっていない無表情のままなのだが。