❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
軽く胸前で腕を組み、片手を自らの顎へあてがいつつ、仕上げとばかりの言葉を並べる。
「何より、正体が何であれ、佐助殿の助け無しで俺達は乱世へ戻る事も叶わない。ここはひとつ、元の世へ戻るまでの間は互いに休戦協定を結ぶ他ないだろう」
「……確かに、佐助だけがわーむほーる出現の正確な刻を分かってるからな。しかたねえ、光秀の言葉に乗せられるのは甚だ癪だが、元の時代へ戻るまでの間は、敵味方どうこう言ってる場合じゃねえか」
「ありがとうございます、秀吉さん。では改めてそこで固まってる二人に状況説明をしたいと思います」
光秀の説得に応じる形で秀吉が溜息を漏らす。確かに今は敵陣営だ何だと言っている場合ではない。事態を見守っていた凪は、心底安堵を滲ませて吐息を零した。佐助も秀吉に向かって頭を下げ、改めて幸村と兼続の元へ向かって行く。
「まさか真田幸村と直江兼続まで飛ばされて来てるとはね」
「ですが、無事合流出来て良かったです。私達の帰還に合わせなければ、あのお二人は五百年後の世へ取り残されてしまうところでしたから」
まさかの幸村と兼続の登場に驚いたのは何も凪達だけではない。あまり表情には出ない為、分かりにくいと言われがちだが、家康とて密かに驚きはしていた。それを拾い上げるようにして三成が同意を示し、さらりと怖い事を天使の如く爽やかな笑顔で述べる。戦国武将御一行に新たなる加入者が現れた事で、軽く額に片手をあてがいながら悩ましい顔をしていた彼方だったが、ふと佐助から諸々の説明を受けている幸村の姿をちらりと見た後、凪へ告げた。
「……ねえ凪、あの赤い方…真田幸村、あんたの元カレにそっくりじゃない?」
「……う、」
「………ほう?凪のもとかれは幸村殿に瓜二つなのか」
こそりと耳打ちしたつもりが、しっかり光秀相手にも聞こえてしまっていたらしい。小さく呻いた凪を余所に、光秀がさも興味深いといった様子で片眉を持ち上げた。光秀が元カレの意味を正しく把握している事に驚いた彼方は、藪蛇だったかななどと思いつつも、話を続ける。