❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
「確か【すまほ】だったか」
「何で光秀さんが知ってるんですか」
凪が取り出した長方形の掌より一回り程大きな機械。それは即ち文明の利器、スマートフォンであった。
「凄いな、凪さん。どうしてスマホを?」
「光秀さんと御殿でお茶してる時、ちまきの写真撮って見せてあげてたの。ね、光秀さん」
「ああ、まるで奇術のようでなかなか興味深かったな」
「そうかそうか、俺からの呼び出しを無視してそんな事をしてたのか、光秀」
「おっと藪蛇だったか。五百年後に来てまでお前の小煩い説教は遠慮願いたいところなんだが」
あらゆる準備を怠らない佐助も、スマホまでは持ち歩いていなかった。感心したような声を上げた佐助に対し、ちょうどワームホールに吸い込まれる少し前までスマホで写真を撮って遊んでいた事を告げた凪が早速電源をつけ始める。凪に同意を求められ、おもむろに頷いた光秀を見て秀吉が片頬を引き攣らせた。さらりとさして悪びれていない風で光秀が告げたと同時、凪のスマホの電源が入る。
『♪~♪~』
「!!!?」
ディスプレイが点灯したと同時、電波が繋がったのだろう。マナーモードにし忘れていた端末から機械的な通知音が鳴り響いた。びくりと凪が手にしていたものへ視線を向けた光秀以外の武将達が一気に警戒の色を滲ませる。
「凪、早くそれ離して…!」
「え!?家康!?」
咄嗟に帯刀していた短刀の柄へ手をかけた家康が、凪へ真摯な声をかけた。滅多に聞く事のない真剣な声色にびくりと肩を跳ねさせた彼女は、驚いた様子で家康を見る。じっと黒々した眸に見つめられた家康は、あからさまに怪訝な面持ちを浮かべて眉根を顰めた。
「そんな奇妙な音なんて聞いた事ない。火もないのに勝手に光ってるし…魑魅魍魎以外の何なわけ」
「……か、」
(可愛い!!家康…!!)
よもやまさか家康がそういった類いを信じる質だったとは。一番興味なさそうな雰囲気を滲ませている割に垣間見えた一面へ、凪の胸の奥底がぎゅっと掴まれる。