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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第12章 仰せのままに



当たり前のように質問を質問で返され、凪が不服げな面持ちを浮かべる。指先同士を絡めるようにして繋いでいる手を軽く揺らし、彼女が仄かにねだるような雰囲気を滲ませて男をじっと見つめた。漆黒の双眸に何処となく甘えるような眼差しを注がれ、光秀が軽く身を屈めながら凪の耳元へ唇を近付ける。

「寒い冬の間は、暖を求めて仔猫のようにお前が自ら擦り寄ってくれるだろう?」
「!!!?」

凪にしか聞こえない、秘めやかな声で光秀が囁いた。ぎょっと目を丸くした彼女が端正な男の横顔を見れば、光秀が金色の眼を眇めてくつりと低く喉奥を鳴らす。

「甘え下手なお前の貴重な姿を堪能出来るならばいっその事、年中冬でもいいくらいだな」
「あ、甘え下手な光秀さんにそんな事言われたくないです……!あと、年中冬は私が困ります!」

無論、光秀のそれが冗談である事は分かっている。…が、大いに自覚のある事態に凪が苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、辛うじて言い返した。

乱世の冬は、とてつもなく寒い。就寝のひと時や早朝などは、例え夜着を着ていても震える程の厳しさだ。僅かな暖すら逃すまいと、寝入っている最中に光秀の体温を求め、凪が自ら身を寄せたのは一度や二度で収まるものではない。

「確かに俺も甘え下手ではあるが、甘えさせる手腕には割りと自信がある」
「う、否定出来ないのがちょっと悔しい……」
「今後は冬だけと言わず、年中擦り寄ってくれて構わないぞ」

凪が内心で羞恥と熾烈な戦いを繰り広げている事を知りながら、更に追い討ちをかけるように光秀が唇に綺麗な弧を描いた。揶揄の色が過分に窺える切れ長の双眸を男から流され、彼女が照れ隠しの要領でむっと眉間を顰める。

「夏は暑いから遠慮します……!」
「なら春と秋ならいいのか」

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