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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第10章 どちらかと言えばサバイバル



甘やかな色を乗せたその声に、凪の頬へ鮮やかな朱が散った。両手で抱え持っている光秀の成果は、働きとして見れば中々のものだ。唇に弧を描く光秀をちらりと見やり、凪が視線を泳がせる。

「ご褒美…何か望みのもの、ありますか……?」
「やれやれ、随分と意地の悪い事を言う」
「っ、」
「俺が欲するものなど、お前はよく知っているだろう?」

欲という言葉と無縁な自分が唯一心動かされるものなど、大概決まっている。正直なところ、凪から与えられるものならば、どんなものでも嬉しい事に変わりはないのだが。果たして彼女は何を選び取る事やら。相手を敢えて試すような物言いをした光秀に向かって、凪が軽く背伸びをした。そうして、触れるだけの口付けを彼女の方から贈ってくれる。

「これで合ってます……か?」
「ああ、十分だ」

おずおずと問うて来る凪の上目を受け、光秀が笑みを浮かべた。そのまま彼女の額へ唇を押し当て、お返しとばかりに軽く口付けた後で片手をそっと攫う。

「先程斜面を登った時、向こうに湧き水を見つけた。そこへ行くとしよう」
「はい……!」

然程遠くはない場所に見えた湧き水へ凪をいざなうよう声をかけると、しっかりその手を握り返して、彼女が華やかな笑顔を浮かべてみせた。途中、手近なところに生えている山菜をあれこれと採取しつつ、そのまま食べられるものは二人でつまみ合い、目的の場所まで向かう。
やがて辿り着いた先、清らかな水が湧き出ているそれを片手の平ですくって確認し、飲める事が分かってから竹筒を取り出した。凪の分として水を汲み、冷たさが外側にまで伝わって来る竹筒を渡す。

「何かこうやってると、ピクニックみたいですね。だいぶサバイバル寄りだけど」
「ぴくにっく?」
「えーと、なんていうか……散策中にお弁当食べたりする事、かな?むしろお弁当が目的というか」

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