❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第10章 どちらかと言えばサバイバル
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木漏れ日が射し込む森の中、光秀が率いる一団はそこで立ち往生を余儀なくされていた。
家臣に用意させた地図に一部誤りがあったらしく、当初進む予定であった道では幅が狭い為、後方に控える積荷を乗せた荷車などが進めないとの事態が起こったのだ。一部兵を分けて別の道から合流する事も視野に入れたが、肝心の積荷が信長から預かった、視察先へ贈る為の荷であるのも相俟って、数名の家臣を先に進ませ、別の道を探らせる事となったのである。それにより、一団は思いがけぬ形で束の間の休憩を取る事となったのだった。
「凪、疲れてはいないか」
「全然平気ですよ!それにしても、お天気が良くて良かったですね」
「立ち往生の上に悪天候とくれば、家臣達の士気も下がりかねないからな」
光秀と共に織田家所縁の姫として、此度の視察兼同盟国の大名との会合へ出席する事となっていた凪も、彼の愛馬へ共に跨がり、同行していた。馬を家臣に任せた後、大きな樹木の木陰で涼んでいた凪の元へ、家臣達と打ち合わせを終えた光秀が近付いて来る。
幸いにも穏やかな春を通り越し、若干初夏へ片足を踏み入れている今時期の気候は実に晴れやかだ。むしろ若干暑さすら感じる程で、見上げた空には雨雲の気配など微塵も感じられない。
木の根付近に腰を下ろしている彼女の隣へ片膝を立てて座り、光秀が凪の髪をひと撫でした。その優しい手付きに笑みを溢し、凪が首を傾げてみせる。
「このままここでしばらく待機なんですよね?」
「ああ、先を行かせた隊が道を確認したのち、改めて出立予定だ。とはいえ、すぐには戻らないだろう」
「あの地図じゃ、道が分かりにくいのも仕方ないですよ」