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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前



「あれ、なんか人だかりが出来てる…」
「主に娘達が集まっているようだな」

騒ぎは一行の進行方向に出来ており、黄色い歓声が響き渡っている。その様を見て凪が不思議そうに首を傾げると、光秀もそちらへ意識を向け、人だかりを観察した。一行が同じ方向へと感心を向ける中、彼方が片手をひらりと振ってみせる。

「ドラマの撮影とか、ロケで芸能人でも来てるんじゃない?私はそういうの、全然興味ないけど」
「げいのうじん、とは何だ凪」
「えっと……格好良かったり美人だったり、演技や歌が上手かったり、お話が上手で面白かったり…とにかくそういう人気な人達の事です」
「ほう?ではあの人だかりの原因は、さしずめ男といったところか」

京都であれば、正直ロケや撮影などに出くわすなどそう珍しい事でもない。何ならある意味芸能人並みにハイスペックなイケメンばかりを連れた一行である為、そういった事には一切興味のない凪と彼方は、黄色い歓声が満ちる人だかりを避けて通ろうと、道を外れようとした。

「おい、なんだよこの女ども!ちょ、触るなって…!」

(……おかしいな、春日山の皆の事を思い出したら、幸村の幻聴まで聞こえて来たみたいだ)

前方の人だかりから聞こえて来た、聞き覚えのあり過ぎる声にしかし、佐助は一度首を緩く振る。何故ならここは五百年後の日本。自らのズッ友、真田幸村は乱世に居るのだから、五百年後の京都の道端で沢山の女性達に囲まれている筈がないのだ。

「……おい、あまり大声を出すな。これ以上騒ぎになるのは面倒だ」

(………おかしいな、今度は兼続さんの声まで。もしかして俺も、案外皆に会えなくて寂しく思ってるのかもしれない)

せっかく現代に来たのだから、しっかりと春日山の面々にはそれぞれ、喜びそうなお土産を買って帰ろうと考えた佐助を余所に、群がる女性達の中から見えたすらりとした長身と、陽の光を反射させる綺麗な銀髪を目にして、凪がきょとんと呟きを落とす。

「………あれ、産業スパイ…じゃなくて兼続さん?」

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