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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前



女性が戸惑った様子で光秀と秀吉を見比べていると、秀吉が苛立たしげに眉根を寄せて文句を言う。

「光秀てめえ、これで何度目だと思ってやがる。ちゃんと自分で断れ、自分で」
「やれやれ、冗談も通じないとは、お前も随分頭が固くなったものだ。まあ、頭の硬さは昔からだが」
「なんだと、この野郎」
「……はあ、暑」

さらりと女性から逃れた光秀は、秀吉の小言を見事に聞き流しつつ、腰を抱いていた腕を解いて、再び凪の手と指を絡めた。平日とはいえ、割と年中観光客の多い京都の町中は人が多く、賑やかだ。湿気を孕んだ蒸し暑さに辟易した様子で家康が溜息を漏らすと、傍に近寄った女性が声をかけて来る。

「すみません、良かったら…」
「悪いけど、他を当たってくれる」

(一刀両断…!)

誰よりもすっぱりと断った家康を見て、凪が相変わらずだなと内心で苦笑した。すごすごと退散していく女性を見て、光秀の隣を歩く凪の傍へやって来た彼方が、片手を口元へあてがって友人へ耳打ちする。

「……ねえ、あの徳川家康、ホトトギス鳴くの待ってくれない系なんだけど!?」
「本当は凄く優しいんだけどね、家康って」

親しくなるまでは基本的にああいった感じだ。根はとても優しいが、打ち解けるには少々時間が必要なタイプである。武将達が女性から声をかけられている姿を目に、佐助はそっと眼鏡のブリッジを押し上げた。安土勢一部だけでこの騒ぎであれば、春日山勢まで加わったらとんでもない事になるところだったな…などと考えて、ふと乱世に残した上司と同僚、仕事仲間達を思い浮かべる。

(不可抗力とはいえ、急に居なくなってしまったら謙信様に脱走か裏切りだと勘違いされそうだ。帰ったらまた鍛錬に付き合わされるだろうな…)

上司の些か傍若無人な仕打ちを思うと少々複雑だが、それでもやはりいつも顔を合わせている面々が少しだけ恋しい。やはり自分にとって、あの場所が特別になったんだなと思いを馳せていると、前方の方から騒ぎが聞こえて来た。

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