❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
「大丈夫です…!私達の方こそ急にごめんなさい!」
「気にするな、道中気を付けるんだぞ」
「はーい!」
女性二人組が頬を赤らめながら立ち去って行く。手を振る彼女等へ、軽く応えるよう秀吉が笑うと、きゃーと黄色い声を上げて二人は遠ざかって行った。そんな光景を端から見ていた一同の内、彼方がひくりと片頬を引き攣らせて告げる。
「………ねえ、あれ何組目?」
「先程の女性達で計十二組目です。さすがは秀吉様、五百年後の世でもお人柄の良さが滲み出ているのでしょう。素晴らしいです」
「三成、あれは人柄の良さではなく、人たらしが滲み出ているだけの事だ」
「そうなのですか?」
「おい光秀、人が聞いてないと思って好き勝手言ってるんじゃねえ」
ホテルを出発して早一時間、ぶらり京都の町散策を開始した武将一行は、かの名所である清水寺近辺に向かい、足を進めていた。途中まではバスを乗り継ぎ、適当なところで下りてのんびりと町を歩く、かなりざっくりとした散策ではあるが、目に入るものがすべて新鮮で不可思議な五百年後の世の町中は、予想通り武将達の目を色んな意味で驚かせ、そして楽しませた。
彼方の服装のお陰で耐性はついたものの、やはり現代における女性の服装には慣れないのか、夏ならではの露出を楽しむ女性達を見る度、秀吉は何事か物言いたげではあったが、表面上はただの和服イケメンだ。全員がイケメン、更に町によく馴染む浴衣姿という事もあり、一行はとんでもなく目立った。その中でも声をかけられる筆頭が、元来の人の良さを滲ませている秀吉と、そして無意識にフェロモンを撒き散らしている三成の豊臣主従である。そして、言わずもがな。
「あの、良ければ一緒に…」
「すまないな。生憎と俺はこの娘から目が離せない。あの男ならば多少は手も空いている筈だ」
声をかけて来た大人っぽい女性がすべて言い切る前に、光秀が繋いでいた手を一度解き、片腕で凪の腰を抱き寄せた。くつりと小さく笑った後、金色の眼を秀吉の方へ流して誘導した様を見て、凪は小さく苦笑する。
(この秀吉さんへのなすりつけ…じゃなくて誘導もこれで十回目…)