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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第9章 龍は一寸にして昇天の気あり



髪を解いて目尻や唇に紅を差し、女物の小袖をまとっているという違和感はあるものの、よくよく見れば確かに兄だ。会いたいと思っていた家族と会えた事の喜びよりも先に、幼子なりの疑問が過ぎったらしく、光鴇がきょとんとしたまま首を傾げる。

「……あにうえ、おなご、なったの?」
「違う。策に必要な対処だ。断じておなごになった訳ではない」
「この餓鬼ども……ふざけた真似しやがって……!!」

ようやく兄と認識した光鴇に対し、きっぱりと疑惑を否定した光臣は、苛立たしげな賊達の声を耳にしてすぐ様子供達を自らの背へ庇った。くしゃみと目の痒さからようやく解放された賊が、唯一の出入り口である木戸の前へ凶刃を抜き放ちながら立つ。

逃げ道を塞がれた事に少年が双眸を鋭くする中、真っ向から三人の男が突っ込んで来た。得物を持たない光臣と鈍(なまく)らながらも武器を所持した賊とでは、そもそも間合いや攻撃力が異なる。それでも背に子供達を庇いつつ立ち回っていると、傍で高い子供の泣き声が響いた。

「わあああん!!たすけてー!!!」
「!」

光臣の動きを封じている内に、別の賊が子供のひとりを掴み上げているところであった。はっとした様子で双眸を瞠った少年はしかし、大人三人を相手にしている故、救出へ向かえない。他の子供達が身を竦めてひとかたまりになる中、そこから飛び出した八重が子供を掴んでいる賊へ突っ込んでいく。

「そいつを離せ!!」
「ぐっ!?この売れ残りが……!!!」
「!?やえ、あぶない!!!」

体勢を崩した男の手から子供が床へ落下した。無防備にも突進した八重を見て、額へ青筋を浮き立たせた賊が、逃げる事も出来ないでいる八重に向かって凶刃を振り上げたのを目にし、光鴇が手にしていた空の椀を投げつける。すこーん!と顔面へ見事命中したその隙に光鴇が駆け出した。賊を一人床へ沈めた光臣が、果敢に敵へ挑む弟の姿を目にして顔色を青くする。

「鴇!!戻れ……!!」
「この餓鬼ども……売り物だからってこっちが手出ししねえとでも思ってんのか!!」

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