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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第9章 龍は一寸にして昇天の気あり



「い、一体どなたですか……!?」
「……はっ!う、恨むんならお前の叔父を恨むんだな!!」
「叔父……?叔父と一体どのようなご関係で……」
「お前の叔父は自分の税を軽くする為に、姪のお前を売ったんだよ!」

まだ声変わりしていない事が幸いしてか、光臣の美少女声に何ら違和感はない。それどころか男に対して怯え、警戒を見せる仕草も、恐ろしいながらも気丈に振る舞う様も完璧だ。光臣に関しては度々自分の遺伝子はどの辺りにあるのだろう……?と疑問に思っていた凪であったが、演技力まで完璧とくれば、やはり光秀のDNAが強いとしか言いようがない。

(普段は寂しいって思うところだけど、今回ばっかりは私に似なくて良かった……!!!)

「ほう?小娘として見ても違和感がないとは驚いた」

自身の大根ぶりが遺伝していない事へ安堵する凪を余所に、光秀が声を潜めながらも感心した風に我が子を見守っていた。言い切った後、ちらりと涼やかで切れ長な双眸を隣にいる凪へ流したのは、含みがある意図に違いない。

「な、何でこっち見るんですか」
「いいや、子らがそれぞれ俺とお前の良いところを受け継いだようで何よりだと思っただけだ」
「本当かなあ……」

凪が何か物言いたげな表情を浮かべると、光秀が可笑しそうに口角を軽く持ち上げてみせた。あの眼差しはそういった意味ではないような気がする……と半ば疑いの視線を注ぐ中、人攫いの山賊と光臣との攻防は続いていた。信じていた叔父に、減税の代わりに売られたと知った美少女は、目尻に薄く紅を乗せた眸を瞠ると、明らかに衝撃を受けた表情を浮かべる。

「そ、そんな……!!」
「家に帰ったところでお前の居場所はねえ。また減税の身代わりとして売られるだけだ。大人しく来い!!」
「いや……!!」

少女に扮した光臣が雪の中を駆け出そうとするも、足がもつれて上手く走れない。そんな相手へ大股で近付いた山賊の男が腕を掴んだ瞬間、光臣は敢えて雪原の上へ崩折れた。

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