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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第9章 龍は一寸にして昇天の気あり



倉庫内にいる子供達の中で、一番高値がつきそうなのが光鴇だ。当人はまったく自覚がないものの、少年は確信した様子で頷いてみせた。そうして倉庫内をぐるりと見回し、やがて光鴇が入れられて来た麻袋へ目を留める。光鴇が麻袋を少年へ渡すと、彼は目の粗い麻袋の端から網目を丁寧に解き始め、実に手慣れた様子で麻縄を作り始めた。光鴇を始め、他の子供達が少年の手元を見ながら感心した様子で眸を輝かせる。

「これで罠を作って、扉を開けに来た奴の足をくくり上げる。他にも縄になりそうなものがないか、皆で倉庫を探してくれ。ただし、あいつらに気づかれないよう静かにな」
「わかった!とき、がんばってさがす!」
「おれもさがす……!」
「おいらも!」

少年の指示を受けた子供達が各々立ち上がり、倉庫内を探し始めた。光鴇は改めて倉庫内をぐるりと見回す。昼でも光が十分ではない中は端へいくごとに暗くなっており、それが少しの不気味さを思わせた。しかし、片手に持ったままである明智一族の証、水色桔梗紋入りの手拭いを握りしめて自身を叱咤した幼子が、足を踏み出す。

少年が言った通り元々は子供達を閉じ込めておく場所、というより倉庫の用途だった事もあってか、使わない角片だとか木の棒、あるいは壊れた箱やぼろぼろの茣蓙ござなどが無造作に収納されていた。麻袋を縄にしていたところを目にしていた為、何か袋のようなもの……と思いながら周囲を見渡していると、壊れた木箱の中に何かが入っている事に気付く。

(あさのふくろ、あった!)

なわにできそう!と喜びながら光鴇が箱の近くまで行き、その中身を覗き込んだ。そうして、目当てである麻袋の中に詰まっているものの存在へ大きく眸を瞠る。

(これ……!!)

手を伸ばした光鴇が麻袋から取り出したのは、やや乾燥して水分を失っている植物───行商人に扮した山賊の男が売っていた風藤葛ふうとうかずらであった。赤く熟し終えた実が房となっているのを改めて確認し、母から聞かされた話を思い出す。

(とき、ぜったいまけない!)

熟し切って乾いた風藤葛をそっと潰さないように小さな手で握りしめ、光鴇は必ず家族の元へ戻るという決意を新たに表情を引き締めたのだった。

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